INDEX 広報 日造協 2004年1月10日 第358号
1面

新年のごあいさつ  (社)日本造園建設業協会会長 成家次男
新年の樹 「狩宿の下馬桜」

2面

3面

4面

【新春座談会】 造園産業界の現状と今後の展望   造園・環境緑化産業振興会 5団体設立7年目の”初夢”
業協会30年の意味
5団体結成の意義
外に向け情報発信

 

1面

新年のごあいさつ
(社)日本造園建設業協会
会長 成家次男

 新年あけましておめでとうございます。自由かつ公正な競争環境の名の下で、過度な価格競争など難しい経営状況が続いておりますが、この年も会員各位のご健勝と発展を心から祈念いたします。
 当協会は全国9総支部・47都道府県支部と1525社会員を擁し、造園建設業で構成する名実ともに我が国を代表する公益法人です。昨年度の大きな機構改革により、公益性を高める一環として大幅な外部学識者を迎えた理事会の運営、地方の時代に対応し総支部に重点を置いた活動に取り組んでおります。 樹木を扱う造園技術・技能の向上を図るため、日造協で実施している「街路樹剪定士」の研修と資格認定はすでに各方面から評価をいただいているところですが、今年度からは、植物が良好に生育できるような植栽基盤としての調査、診断、処方の専門家となる「植栽基盤診断士」資格認定制度を創設しました。造園の専門領域として今後さらに充実を図りたい活動分野です。
 2005年日本国際博覧会(愛知万博)に先立つ今年4月から約6カ月間は、しずおか国際園芸博覧会「パシフィックフローラ2004」(浜名湖花博)が、全国都市緑化フェアと同時開催されます。これは当協会が日本を代表して加盟している国際園芸家協会(AIPH)が承認する国際園芸博覧会で、世界の花々や伝統的な園芸、庭園文化とふれあい、老若男女誰でも楽しめるものとなるよう期待しているところです。
 わが国はこれまでの社会資本整備について、量的充足から質重視へ、行政の方向を“美しい国づくり”に向けて大きく舵を切る方向と報じられています。中でも、「観光立国」を重要な国家戦略とする最近の取り組みと「景観緑3法」の整備が注目されます。外国から日本に来る旅行者は世界で30番台半ばのランクに甘んじており、中国、韓国よりも少ないという。観光小国返上の鍵になるのは旅行者を感動させる中身、日本の独自文化、そして求められるのは美しい自然や歴史に根ざした街並みなどの再生が重要課題です。もともと人の手によって造られ、守られてきた日本の美しい風景が高度成長やバブルの過程で失われた、それらの回復と創生に国の将来がかかっております。また、「景観緑3法」は、景観や緑の質を高める総合的な施策で、それらは我われ専門業のもっとも貢献し得る領域です。 当協会では、このような国の方向に重ねて、我われ造園建設業が蓄積してきた美しい景をつくる技術、自然環境への感性、生き物や建物、多様な素材との組み合わせと調和を図る知恵をさらに高めていきたいと考えております。関係各位におかれましては本年もなにとぞご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

【新年の樹】 
狩宿の下馬桜
(かりやど げばざくら)

 「狩宿の下馬桜」として知られる巨木であり、樹齢800年以上と言われている。樹種はサクラ(学名アカメシロバナヤマザクラ)で、昭和27年3月29日に国特別天然記念物に指定された。下馬桜の名の由来は、1193年、源頼朝富士の巻狩を行った際、陣屋を設けた場所に在ったことによるといわれている。頼朝が山野を歩き回ったときに使った桜の杖を、宿所の前に刺したところ、それが根付いたという伝説もある。山桜の一種のため、開花期はソメイヨシノより若干遅く、例年4月中旬に満開となる。所在地は静岡県富士宮市狩宿98の1。(静岡県支部事務局長・平林勘吾)

2面

【新春座談会】
造園産業界の現状と
今後の展望

造園・環境緑化産業振興会
5団体設立7年目の”初夢”

 

業協会30年の意味

 

 

 

 

 

 


座談会出席者(順不同)1/3
課題の多さは飛躍のチャンス…

(社)ランドスケープ
コンサルタンツ協会副会長
細谷 恒夫 氏


民間シフトの特色ある植木を…

(社)日本植木協会副会長
栗原 理氏





はじめに
21世紀は「環境」の時代といわれる。これに呼応するように、公園緑地・都市緑化への関心も高まっている。だが、厳しい経済社会情勢にさらされる中、造園産業界もまた、厳しい環境が続いている。造園・環境緑化産業振興会は、こうした苦境を打開するため、5団体が課題克服へ向けて同じテーブルに着き、平成9年7月に設立した。これにより、 “造園 ”の社会への認知も進んだが、当面する課題は多い。新しい年を迎えるに当たって、各団体を代表する方にお集まりいただき、現状と課題、そして未来へ向けての展望を語り合った。  司会 わが国の造園産業団体は、このところ相次いで設立30年を迎えています。近年は特殊法人改革もあって、運営の内容も大きく様変わりを余儀なくされています。わが国の山林もまたほぼ30年で天然更新すると言われておりますが、協会もまた、そういうことが言えるかもしれません。2002年に設立30年を迎えた日造協から口火を切っていただきます。
 高橋 私は技術委員長の大役を仰せつかっています。私が業界に入ったのは東京オリンピックの時ですが、高度成長の波に乗り、急成長してきました。短期間に業界が組織化され、官学民の連携も行われた。ところが、ここ10年は厳しい経営、環境下にあります。会員数1500社の中で、公共事業工事主体会社は400〜500社ほど。日造協としても様々な問題を抱えています。これまでエンドユーザーである国民に本当に喜ばれるものを提供してきたかというと、少し反省しなければならない面も感じています。これからは公共に全面依存するだけでなく、もっと民間事業、市民を交えた活動に取り組む必要があるような気がします。資格なども国が認定しなくなるので、協会独自に人材教育、技術研鑚を立ち上げていき、自ら資格認定して社会認知をさせていく必要があります。 
 司会 ランドスケープコンサルタンツ協会(CLA)の副会長であり、関東支部長でもあります、細谷さんはいかがですか。
 細谷 当協会は昭和39年に任意団体・造園設計事務所連合として発足しました。その後昭和42年に日本設計事務所連合に変わり、昭和55年に日本造園コンサルタント協会に、昭和60年に社団法人格となり、61年に現協会名に変わりました。現在は本部と6支部、200社が活動しております。私自身も業界に入り35年になります。 この間感じるのは、領域が広がってきたこと、特に価値観が20世紀と新しい世紀は大きく変わってきています。協会としても課題は多い。その中で、ランドスケープのアイデンティティがあいまいになりつつあります。急激な社会変改の時代だからこそ、再構築する必要を痛感します。 最近、RLAの資格制度を立ち上げました。まだ220人ですが、これから大きく育てて行きます。入札制度改革、設計・工事監督の一括発注システムの確立は早期に実現しなくてはならないと思っています。パーク・マネジメント、公園リニューアルの推進、防災公園、バリアフリー、ワークショップ、公園PFIもあがってきています。色々な課題があるということは、逆に大きく飛躍するステップとしては、いい時期でもあり、そういう仕掛けを是非つくっていきたい。  司会 日本造園組合連合会(造園連)の谷尾副理事長はいかがですか。
 谷尾 当連合会は、昨年設立30周年を迎えました。設立時から技術と技能に優れた人材の育成を重点課題として事業活動を展開してきております。そうした努力が実って、社会にようやく認められてきたと喜んでいるところです。日造協さんと共に、7年間、造園工事基幹技能者を認定し、約3千人となっています。全国の各支部の組合の中では技能検定の受検者が拡大しており、公共の発注の場でも理解を得られるようになり、定着してきました。 今年は、今年開催の浜名湖花博への出展を創立30周年記念事業に据え、全国から若手技能者を募り、3、4週間の予定で作庭研修を行っています。我われは、昔から民間に力を入れてきており、不況を脱皮するために、庭の改造、花の導入ということで、リ・ガーデンの運動をやっています。
 司会 (社)日本公園施設業協会(施設協)の内田副会長に。
 内田 当協会の沿革は、昭和50年に日本公園施設協会として任意で出発し、平成2年に社団法人に認可されて日本公園施設業協会として今日に至っています。5団体の中では、最も新しい組織となります。協会組織はタテ軸に製造、販売、点検、修繕。横軸に遊具、ベンチ、パーゴラ、舗装材、トイレと幅の広い製品を扱っています。造園界の発展に伴走して、大樹の陰で風雨をしのいできました。昨今は “命 ”という別の風が吹いてきています。遊具の安全が子どもの命に結びつき、エンドユーザーから事故への対応などで直接指摘を受けるという厳しい環境になってきているのです。 司会 (社)日本植木協会(植木協)の栗原副会長に。 栗原 協会は、全国の植木の生産、流通に携わる45支部、7地域ブロックで結成されています。今から10年前は900社園の会員がおりましたが、現在は720社園に減り、今後も多少減る傾向にあります。これまでの、植木をつくれば売れる、という良き時代を味わってきましたが、今はつくっても売れない。企業化するにも難しい商売になってきました。特に、大面積の圃場を抱えている園主たちは厳しい経営状況の中にあります。協会としては、供給可能量調査、苗木植付状況調査を行っています。さらにシンボルツリーや大径木について今後、コンサルや造園業の方たちに世に出せないものかと模索している最中です。 その中で、昨年、日本列島植木植物園構想を立ち上げました。北海道から沖縄までの協会員の圃場をネットワーク化し、世界一の植物園をつくろうということです。現在の参加会員はおよそ60社園ですが、これを100社園に増したい。浜名湖花博については、新しい樹木を納入、一年間の養生業務もやっています。なお、コンテナ、庭園樹、新樹種、ロジテック、青年の5つの部会があり、それぞれ活動しております。これまで、公共主体の生産をしてきましたが、これからは民需に対応した特長ある植物を生産することで生き残りに注力しているところです。

3面

5団体結成の意義

 

 

 

 

座談会出席者(順不同)2/3

リ・ガーデン事業普及に注力…

(社)日本造園組合連合会
副理事長 谷尾 喜次氏


遊具の安全問題に積極対応…

(社)日本公園施設業協会
副会長 内田 裕郎氏


 

 

 司会 この5団体も発足して約7年目になりますが、成果について述べていただきたい。
 高橋 この業界をどういう形で社会に認知していただくか、長期的観点からの夢も必要です。「景観みどり連合会」といったようなものに組織を拡大していくのも一つの方法と思う。
 細谷 われらの業界はまだまだ社会の認知度は低い。ただ少なくとも5団体が集まって活動してきた。それが最大の成果だと思います。一般の人や市民への切り口や売り込みがまだ弱いという感じがします。高齢社会、健康志向が強まる中で、我われに関連するテーマ、課題はたくさんある。これらを巻き込んで社会にアピールしていける余地やネタは結構あります。
 谷尾 我われの造園連では、横の連絡はたいへん活発です。不況とはいえ、植木材料でも安くて良いものという観点に絞っても、植木協会さんにお願いするという利点もありますし、枝葉木のリサイクルでも造園連を通じて勉強させていただいたりしています。こうした環境技術は地方に持ち帰って反映する、という面ではいい成果です。コンサルさんからも、リ・ガーデンの普及にアイデアをいただいています。これらの活動は双方に有効だと思っています。いろんなみどり景観に関係する5団体が一致団結して政治的に運動していくには、さらに大きい連合体がいいとは思います。
 内田 5団体が動き出したから、共通の問題認識ができた、ということはあると思います。全国紙誌に広告を出すのは悪いわけではないが、問題は地方での活動に対して、5団体として協力できないか、つまりもう少し地方での展開を強化する方が実効が上がるのではないか。遊具の問題も、地方では造園屋さんも、植木屋さんも扱っているケースも多い。こういうことを一緒に勉強して、いずれかの組織が日常的な点検についてはそれを受け持っていくというような動きになってくれば、意義がでてくることも考えられるのではないでしょうか。
 司会 人材の話も聞きたいのですが。
 高橋 例えば、医師の世界でも新しい技術が出てきたら、それに対してきちんと認定資格というのを、それぞれの団体で認定します。日造協では、街路樹剪定士にしても徹底した試験を行ったり、継続教育を行いながら、更新のときにもう一度スキルのやり直しをきちんとやります。だから、今回の資格はかなりグレードの高い内容になっています。そういうものを世の中に出して、評価を受けながら、取り組みを進め、積み上げようと思っています。C・P・D制度でポイント制度を設け、良い技術者を50人、100人抱えているのであれば、それぞれが継続的に毎年何回かの研修を受ければ、そのポイント数を、企業がどのくらい保有しているかが、企業の評価につながり、それを入札契約制度の中に取り込んでいく努力、そういうことを今後考えていこうと思う。 細谷 設計は、安ければいいという話ではありません。エンドユーザーのために、適正なコストでいかに良いものを提供できるか、ということが基本なので、入札制度が適正かどうかということが、問われています。ただ現状は価格で決められる場合が多く、特に地方に行くとほとんど価格で決定されています。さらに、極端なダンピングで受注している事例があります。ダンピング受注するということは、品質低下や社員の労働条件をかなり厳しくするということで対応しているわけです。それから下請けさんに対しお金を払わないということも発生しています。非常に大きな課題を含んでいます。極端なダンピングを阻止するようなシステムが必要だと思います。入札システムの確立です。
 司会 谷尾さん、人材の育成はどのように行っていますか。
 谷尾 技能向上研修が一番です。民間も厳しい状況ですね。そういうなかでどうしたら良い仕事ができるか。安い材料でも、その場所にあった使用は、平素の技術技能が大事です。
 高橋 最近マンションがたくさんできていますが、実に外構造園工事の植栽についてはグレードが低い。そうすると、これはものを買った住民が損をしているんですよ。そういう啓発的なことは全員一致してやらなければなりません。何でこんな低レベルの植栽をマンションでやっているのかと。そういうことを世の中に発信してあげないと、一般入居者がかわいそうです。
 内田 18年かかって、昨年10月ですが、遊具の安全に関する規格を発表しました。これについては普及活動に努力していきたい。ここで問題になったのは、安全性なんです。SPマークをISOと同じように導入しまして、規準案はありますが、つくって絵に描いた餅では困りますので、これがきちんと動いているのか、コントロールされているのか、第三者機関に依頼して審査中です。そういうシステムがきちんとできている会社が生産したもののみ、SPマークを使用してよろしいということを来年の4月から行います。 協会の方針としては、最終ユーザーの子どもの安全と遊具の重要性に視点を置きます。それに伴い基準とシステムを点検する人間が必要です。現場に遊具の点検をする整備士が約1000名おります。この次のステップとして、公園施設管理者、幼稚園や保育所の先生方、民間の人を含めて日常点検レベルのことをぜひ行っていただきたい。1週間前に、母親クラブが約1千ヵ所について独自に点検されたんです。70%が腐っているとか壊れているという結果でした。だからケガするんですよ。そういう日常点検レベルの知識を持った方を増やすことによって、安全の底上げをしようとしています。アメリカでもこういうシステムは成り立っています。 

4面

外に向け情報発信

 

 

 

 

座談会出席者(順不同)3/3

独自に人材教育、資格認定…

(社)日本造園建設業協会理事、技術委員長 高橋 一輔氏




司 会
環境緑化新聞主幹 井上 元 

 

 

 

 司会 5団体が協力してやれることについては連携して効力があるような活動を行っていかなくてはなりませんし、時代変化に合った事業を展開しなくてはなりません。
 高橋 そういうことも含めて、みな共通のものがあるわけです。そういうものを連合会の中でやって世の中に訴えることをやらなければなりません。
 民間と役所におんぶにだっこすることはできませんから、そういう中で発展的に連合会の中で啓発の講習会をバンバン行って、都市公園レンジャーみたいなシステムを作りたい。昔は、造園の人たちには当たり前の話ですが、庭園の中に、庭番という人がいたんです。そういう庭番みたいな組織が伝統的にあったのです。原点に戻って都市公園レンジャーが公園の安全管理を同時に行う、プレーリーダーが遊び方を教える、そういう都市公園レンジャーのような人を公園に配置して、造園の管理技術の延長線上で行ってく。造園業界の業務の拡大になる。
 NPOがやるかもしれない、どこかの企業に受け皿があればやるかもしれない、財団がやるかもしれない。しかし、ハードも技術も含めたトータルなところは、造園協会連合みたいなところが、きちっとやっていますということが必要です。
 細谷 我々の中で一番話題になるのは、やはりパーク・マネジメントです。今言われたような話を現実的に行おうとしています。東京都でもそういう動きがあるそうで、都立公園でそういうシステムを作ろうとしています。
 内田 いま言ったような動きがあるなら、1社1社で行くよりも連合体で行った方が言いやすい。弁護士でも置いといて言わせるとか。共通項を抱えているんですから。
 司会 植木協さんにお聞きします。以前に植木の優良表示制度をやりましたね。
 栗原 ラベルを付けて流通していますよ。浸透しています。ただ優マークはなかなか難しい点があるので、印刷からは外しました。
 司会 これからは環境立国や観光立国という時代に入ってくると思います。造園界は色々課題はあるけれども、これをプラスに考えてみます。
 細谷 21世紀は、大きな課題と可能性があります。1つには循環型のシステムは何としても確立しなければならない。そういう方向に向かわない限り地球は破滅すると思います。 我われは、20世紀には20世紀のものづくりをしてきましたけれども、21世紀の今日ではアイデンティティも大きく変わらなければいけないという気がします。高齢社会になってくるし、ストレスが世の中に多いということで、みどりはストレス解消に効果があるし、一般の人でも理解しやすい要素がたくさんあるわけです。園芸・緑化は健康づくりに強く連動しています。 そういうものが一般にも認知されれば、緑を増やそうということになるし、商談もついてくる。地球温暖化にも貢献できるし、健康という身近な課題にも貢献できる。もっと我われの仕事を社会に強烈にアピールしなければならない、ということが当面の課題としてあります。そのためには我われの業界は、開発計画の中でのイニシアチブを握るような仕掛けが必要です。戦略的に世の中を誘導できるということが重要であると思います。
 栗原 街路樹や公園樹にしても成長の早い樹種は、20年から30年もたつと、道路面の破壊や、民地には入り込む等、住民も困る面がでてきます。こうした場合、新しい樹に植え替えた方がいい。だから、役所に働きかけて、建物と同じで何十年かで更新するようなシステムを提案できないかと思っています。そうすれば、仕事も増えます。 高橋 更新って言うんだけれども。一業界でそれをやろうとすると抵抗もあるんです。例えば、街路樹について情報発信しなければならない。何年かたったら他に移植しますよとか。市民と共に皆でまとまって発言しないから駄目なんですよ。   
 栗原 植木植物園構想は、一般の人に畑を開放して共に緑に接して興味を持ってもらうというのが最優先ですから。
 内田 遊具の事故や安全規準について訴えていたら、どうしたかというと撤去撤去になってしまいました。点検の結果、一部更新するということになりました。100台あると、更新は一割にあたります。新しいものに切り替えましたというPRは発注者がしますが、残りの90台は撤去されているんです。子どもの遊び場に遊具は必要なんですよ。子どもの環境が壊されているんです。すごく悪い状況になってしまいました。これを変えなければなりません。 循環型社会、環境に優しいだとか、負荷をかけないという大前提があって、それに対して望ましい材料は何ですか? という議論を行っているんですが、なかなか結論が出ません。結局新規の仕事はないわけですから、点検をお金に変えていきたいと思います。
 それから遊び場と遊具の数も減っていますが、入れないと子どもが健全に成長しないよと、どんどんPRしていく。それに関しては造園の先生方では駄目なんですよ。
 文部省とか、大学の先生とか母親クラブですとか、熱心な方がいっぱいみえるんですよ。そういう方々が自分達でボランティアで調査したり、研究された結果を逆に出してもらうと。そういう中で買い替え需要を促していきたい。
 高橋 おっしゃるとおり、行政としては市民に言われたらすぐ遊具なんて撤去してしまいます。そういうことはおかしいと共通の団体で言うべきです。シンポジウムを行うなどして、もっと市民に訴えていくべきです。我われのような産業界が潤っていくには仕掛けていかないと駄目です。
 司会 最近は、各地で花や緑、環境のイベントが花盛りという感じですね。
 栗原 約900万円を予算化して、浜名湖に日本庭園の見本、新樹種の展示を行います。180日間、約半年。やはり官から民への時代ということで大いにアピールしようということで、これをまず成功させたい。
遊びの大切さを国際基準評価で
 内田 同じ浜名湖なんですが、9月にプレイベント、遊具の安全に関する国際シンポジウムというのを開催します。
 オーストラリア、アメリカ、それから中国のイベントを視察して感じたことですが、中国は非常に造園イベントに近いですけれども、オーストラリアとアメリカについては遊び場専門。当協会のテーマとし、遊びの大切さ、安全性の規格基準を国際レベルの問題として考えたい。アメリカとEUの基準も含めて、国際的なつながりを持ち、評価をし合える場を見つけてもらいたいと考えております。
伝統技能・技術を次世代へ繋ぐ
 谷尾 私どもも浜名湖博に参加しますが、大阪花博で研修生として参加した人を、今回の浜名湖博では指導員として配置しております。このような形で、伝統的にずっと技能・技術と人がつながっていくと思います。
パーク・マネジメントの研究へ
 細谷 我われの課題はハードからソフトですね。今どこへ行っても一番の話題は、パーク・マネジメントです。今後、ソフトの多様化が求められていますから、それができるかどうかということが問われていると思います。大きなイベントというのは非常に重要だと思いますけれども、小さなソフトの話も非常に大事になってくると思っています。我われとしても商売になるようにパーク・マネジメントを研究して参りたい。大規模公園を1社ずつ担当しても充分仕事があるわけです。
 それから、環境緑化新聞主催の「エコ・グリーンテック」をお手伝いしていますが、やはりお客さん方の反応を聞いてみますと、新製品を含めた情報をけっこう求めて来るんですね。パンフレットを是非欲しいという話もありますし、その後、問合せも結構あるそうです。ですから、新製品もしくは何かを世の中に出したい企業にとっては、1つのきっかけになります。こうした専門、企業展示会も、皆さんに認知されてきたなという感じがします。
日本列島植木植物園構想の実現
 栗原 わが協会でも、浜名湖博などイベントに積極参加していく方針に変わりはありません。また、日本植木植物園構想も実際に動き出しましたので、これを社会に認知していただくため、5団体活動も含め、色々アピールを広くしてまいりたいと考えています。 
 司会 造園・環境緑化産業展「エコ・グリーンテック」は、造園界が元気を出すため始めたものです。今年は8年目となります。このイベントが始まってすぐ、造園・環境緑化産業振興会も結成された経緯はあります。
 今年は、日比谷公園が創立100年の記念年に当たるということで、10月に日比谷公園ガーデニングショーが企画され、36万人余が訪れ、盛況のうちに終りました。「エコ・グリーンテック」とは全然雰囲気も人の動きも違いますね。業界も一般市民向け展示会と専門展示会の両方をやっていく必要があると考えています。
新しい街づくりは造園家主導で
 高橋 いま色々なところで言われている民間による社会基盤の運営管理。これは5年〜10年後、平成20年ごろには動き出すと思います。そのためにも今から受け皿作りに対応しなければなりません。間違いなく東京都も20年には動き出しますが、それを財団で作るのか、NPOでやるのか。そういうことを視野に入れて、世の中に対する情報発信を行っていきたいと思います。それと継続教育なんですが、日造協も対応していく予定ですが、資格を取ってそれで終わりではなく、造園学会が事務局、運営委員会を持ち、個人が造園学会に登録して継続教育「C・P・D制度」を利用して、参加していただきたい。それは造園家でも、庭師でも全部含まれます。それを客観的に認証するシステムを行おうというものです。点数だけのやり方ではおかしいが、評価が出てくる。そういう技術評価を自己資本の中に換算する手法が、欧米では行われています。日本のシステムでは、技術を習得してもハウツーをお金に換算できません。ヨーロッパではできているから、ヨーロッパの技術者は一生懸命技術に力を入れれば自己資本の中に組み入れられるという理由で頑張れるが、日本はそこまでになっていない。先進国の中では日本は一番遅れています。それと日本の将来は観光立国と言っているが、東京にリピーターが来る人数はモロッコの次で4百万人、フランスの場合で7千5百万人です。これは、街づくりが悪いことと、宿泊が高いことです。 造園界のハウツーは、むしろこれからで、将来に悲観的になることは全くありません。21世紀の街づくりは造園家の出番だと思います。  司会 元気な展望が示されたところで、時間も参りました。本日はありがとうございました。