INDEX 広報 日造協 2004年3月10日 第360号
1面

全国造園デザインコンクール表彰式開く 「若い人の感性が大切」懇談会も
街路樹剪定士認定資格カード発行へ 平成14年度までの資格取得者留意事項
第4回総支部長会議を開催 平成16年度予算などを検討
春の都市緑化月間 4月1日から6月30日まで 各地でイベント
【樹林】 ランドスケープアーキテクトの「まちづくり」への参加
     特定非営利活動法人東京まちづくり支援センター理事長 福田一敏

2面

第30回全国造園デザインコンクール受賞者決まる
 審査委員・講評

3面

景観法が閣議決定 わが国初の景観総合法に
【ふるさと自慢】 第41回 兵庫 コウノトリ野生復帰事業

4面

【総・支部だより】
   技術研修会・東北地方整備局との意見交換会開催  東北総支部
   北陸地方整備局との意見交換会開かれる      北陸総支部
   情報化社会に対応し、パソコン研修を実施     山口県支部
   市民参加熱高まる 札幌雪まつり盛大に      北海道支部
【緑滴】若き技術者の育成
【事務局の動き】

 

1面

全国造園デザインコンクール
            表彰式開く 
「若い人の感性が大切」
            懇談会も

 

 

表彰式参加者で記念撮影

 平成15年度第30回全国造園デザインコンクール表彰式を2月9日、東京・千代田区麹町の弘済会館で開催した。
 表彰式では冒頭、主催者を代表して、成家次男当協会会長があいさつ。
 「昨年と比べ、応募作品数は若干減ったものの応募校が増えたのは、それだけ多くの学校で取り組まれていただいたことであり、大変嬉しく思う。国会では景観緑三法が審議され、美しい日本をつくるための制度の充実が図られている。その実現には若い人の感性が大切だ。今後も優れたデザインを顕彰し、広く社会にアピールしていきたい」との旨を語った。
 次いで、添野龍雄文部科学省教育課程調査官は、「環境がキーワードになっている時代であり、造園という学問がより重要になっている。こうした中、コンクールの果たす役割は大きい。受賞者の方々の栄誉を称えるとともに、コンクールのますますの発展を祈念している」と祝辞を述べた。
 審査報告では、審査委員長の油井正昭桐蔭横浜大学教授が「応募作品の3分の2が住宅庭園部門であり、新たな街区公園の計画を身近に考えられないという社会的な影響もあるのかもしれない。コンクール全体のバランスもあり、今後の対応を図りたい。作品自体は年々質が上がっており、プレゼンテーション面など、その向上に驚くばかりだが、今後はさらに、周辺環境への対応や施工のことも考えたデザインに期待したい」と、作品の概要を語った。

街路樹剪定士認定
資格カード発行へ
平成14年度までの
資格取得者留意事項

 

 

 

 

カードのサンプル

  街路樹剪定士資格が、有効な資格として社会的にも認知されつつあることを受けて先般、資格要件が変更されました(広報日造協第354号(平成15年9月10日)既報)。これに伴って認定カードを発行することになりますが、平成14年度までに街路樹剪定士の資格を取られた方のうち、改姓や住所・所属会社の変更がある方は、認定番号、氏名、連絡先(住所、電話、FAX)及び身分を証明できる書類(運転免許証又は保険証のコピー)を添えて、受講した支部へFAXまたは郵送で連絡して下さい。
 カード式認定証交付については、後ほど本部より、認定者の個人住所宛に連絡致します。また、カード式認定証の交付料金は、税・送料込みで3千円です。
 なお、資格要件の主な変更点は以下の通りです。@有効期限を設け、5年毎に更新講習行い、常に知識・技術の研鑚を行うこと。 A街路樹剪定士の認定者は、有効期限の記載されたカード式認定証の交付(有償)を必ず受け、街路樹剪定の業務に就くときは、これを携行すること。B行政機関等からの問合せにも対応できるように、所属先(企業等)のデータ管理の更なる徹底を行うこと。

第4回総支部長会議を開催
平成16年度予算などを検討

講演する高梨国交省公園緑地課長

 平成16年度事業計画など、新年度予算について検討するため、平成15年度第4回総支部長会議を2月20日、午後1時30分から東京・千代田区麹町の弘済会館で開催した。
 会議は冒頭、成家次男会長があいさつ。次いで、国土交通省都市・地域整備局公園緑地課長の高梨雅明氏より、今後、協会員にとって関係の深い法律となる「景観緑三法」をテーマに講演があった。
 その後、議事に入り、@平成16年度事業計画(案)について A平成16年度暫定予算(案)について B日造協事業活動強化緊急対策(案)について C基盤整備特別委員会(案)の設置について D給与規定の一部改正について Eその他――について熱心に審議が行われた。

春の都市緑化月間
4/1 〜 6/30
各地でイベント

 春季における都市緑化推進運動が4月1日から6月30日までの3カ月間にわたって展開。運動は4月29日の緑の日、緑の週間を中心に行われ、緑の愛護のつどいや都市緑化基金等への募金活動などが行われる。

【樹林】

ランドスケープ
アーキテクトの
「まちづくり」への参加

特定非営利活動法人
東京まちづくり支援センター
理事長 福田 一敏

 我が国の制度には、総合的なまちづくりの領域がなく、30年来、建築・都市計画行政が、慣習的に「まちづくり」と呼ばれてきたにすぎない。言うなれば、本質的な「まちづくり」は、行われてこなかったというのが実状である。そんな中、僅かではあるが、「まちづくり」の意味を理解し、計画づくりの一端を住民にゆだねようとする動きが出て来た事は、好ましいことである。一方、この事は、同時に住民側にそれを担うだけの「見識」や「理解」「努力」さらには、「一定のルールづくり」が必要になってきている。むしろ、行政は今までの過ちや不備を十分に反省した上での意向であるのに対して、住民あるいは市民の側の準備は必ずしも充分とは言えない。しかし、これらについては、市民と行政とのパートナーシップ、さらには「まち」に関する専門家の協力を得ることによって、必ず解決できるはずである。重要なことは、「より多くの住民が、自らのまちを自ら守り育む」ことを理解することであり、そう言った気持ちを育てる事である。
 ところが、「まち」や「公園」に対しての専門家であるはずの造園コンサルタントや施工を担当する造園人等のランドスケープアーキテクトの多くは、今まで市民に対してそれらについての思いや考え方をメッセージとして発信していただろうか。特に、「まち」に対する思いは、余り語られなかったと思う。当然のこと、公園も都市の中に点在する緑も「まち」の一部を構成するものであり、「まち」無くして公園も緑地計画も存在しないはずである。一方、各都市で策定されている「都市計画マスタープラン」では、必ず「豊かな緑の充実」「潤いのある公園の整備」が謳われている。緑の重要性や公園の必要性を考え、計画に反映する場に多くのランドスケープアーキテクトが、もっと参加すべきである。例えば、「緑の都市計画」や「市民が理解できる緑地計画」を一市民であるランドスケープアーキテクトが、実践する必要があるのではないだろうか。それができる技術を持っているのが、ランドスケープアーキテクトだと私は考える。
 当NPO法人は、都市計画や土木、建築、造園等の専門知識を有する技術者や不動産、銀行業務の専門家等の市民を中心に、今後は、さらに様々な専門的知識や経験を持った市民に幅広く会員の層を広げ「まちづくりを支援する専門集団」として、全国の市民や行政が「まちづくり」において困っていることに対する支援協力、「まちづくりに対する市民個々の力」を大きな市民力とするお手伝いを活動の目的として設立された法人である。NPO法人への参加は、あくまでも個人としての参加が基本である。当法人に限らず、ランドスケープアーキテクトとして「まちづくり」に参加しては、如何だろうか。

2面

第30回
全国造園デザインコンクール
受賞者決まる

 

 

 


日本造園建設業協会会長賞
中村龍斗さん
(岐阜県立加茂農林高等学校)

 当協会主催、(社)ランドスケープコンサルタンツ協会並びに全国高等学校造園教育研究協議会共催、文部科学省並びに全国農業高等学校長協会後援の平成15年度第30回全国造園デザインコンクールの審査結果が決定した。コンクールは造園の設計及び製図技術の向上と奨励のために実施。応募資格は、一般の部、大学生の部、高校生の部の3部とし、課題はA住宅庭園、B街区公園、C実習作品の3部門。 今回の応募総数は、344点、このうち入選18点、佳作11点、奨学賞20点の計49点が入賞。最も指導力の優れた高等学校に贈られる文部科学大臣奨励賞は、滋賀県立八日市南高等学校が受賞。さらに、入選作品の中から (社)日本造園建設業協会長賞1点、(社)ランドスケープコンサルタンツ協会長賞1点、全国高等学校造園教育研究協議会長賞2点が選ばれた。なお、詳細は日造協ホームページに掲載予定。

審査委員・講評
 ■委員長 油井 正昭

(桐蔭横浜大学教授)
 全国造園デザインコンクールは今年度で第30回を迎え、コンクールの充実に努力を重ねてきた関係者に敬意を表したい。第29回から応募要項が若干変更され、高等学校だけにあった作庭実習作品は、課題名が「実習作品」となって大学生も応募可能となり、この他作品にテーマを必ず記載することも条件になっている。
 今回の作品総数は344点、課題別では住宅庭園部門が233点(67・7%)、街区公園部門が89点(25・9%)、実習作品部門が22点(6・4%)で、住宅庭園の作品が3分の2を占めた。作品は入念に審査を行い、入選18点と佳作11点を選定した。また、多数の優秀作品を応募した高等学校に文部科学大臣奨励賞、個人作品に6日本造園建設業協会長賞、6ランドスケープコンサルタンツ協会長賞、全国高等学校造園教育研究協議会長賞(2点)の特別賞を選定した。入選、佳作、特別賞を受賞した方々に心からお祝いを申し上げます。
作品は全体的に大学も高等学校も住宅庭園に比べ街区公園の作品が低調だった。街区公園の役割や周辺環境の検討状況、計画主旨、計画過程などが作品上で判断できるように仕上げる必要がある。そのためのプレゼンテーション技術も大切で、図の配置、文字の規模と位置、説明文、着色、隣接地の記述に注意している作品の評価が高い。なお、応募要領が守られていない作品がかなりあった。作品づくりに入る前に確認すべきことである。

■添野 龍雄
(文部科学省初等中等教育局 参事官付教科調査官)
 30回という節目を迎えた全国造園デザインコンクールの審査に初めて参加させていただきました。造園デザインは、造園の計画・設計・施工・管理にわたる総合的な知識・技術が問われるものであり、その意味では非常に大切なものではないでしょうか。
 今年度の高校生の応募は、27校219作品と昨年度より学校数は増えたものの、応募数は減りました。多くの作品は、質が高く、若々しい感性を遺憾なく発揮していました。反面、応募要領に合致していないなど、未完成と思われるものもありました。
 今回の文部科学大臣奨励賞は、14作品を応募され、そのうち入選が6作品、佳作が2作品と、高い指導力を示した滋賀県立八日市南高等学校といたしました。2年連続の受賞ということになります。
 今後、より多くの学校が応募され、より質の高いコンクールとなることを望みます。

小板橋 二三男
(全国高等学校造園教育研究協議会理事長)
 今年度は応募総数では、昨年より減少したものの、高校・大学ともに新たな応募校が増えたことは、本コンクールの意義が広く教育界に認められた証拠である。また、実習作品の部で大学・専門学校での応募が見られたことは、教育において、実習でのものづくりの意義が認められてきた証であると思える。この傾向は多いに歓迎したい。
 個人住宅庭園部門において、日造協会長賞を高校生が受賞したのは、この部門において高校生のレベルがかなり高いことを実感させるものである。これは、街区公園に比して住宅庭園空間の把握が容易なためではないかと思われる。
 高校生の部において、今回特筆すべきことは、長野須坂園芸高校の健闘である。全分野に渡って質の高い作品が寄せられたからである。今後の更なる健闘を期待したいものである。
 コンクールの30年を振り返ると、年々作品の内容・表現技術の向上が顕著に見られ、審査員の一人として、コンクールに携われたことを心から感謝したい。

西山 俊雄
(全国高等学校造園教育研究協議会副理事長)
 高校27校(219点)からの応募があり、プロ顔負けの作品、また一般・大学生の作品より素晴らしい作品もあった。ただ、残念なことに一部の高校に偏っていて、中には応募規定に則していない学校もあった。このことから教師の力量とその指導力が作品のできばえに大きく影響することを痛感した。最も指導力の優れた学校に贈られる文部科学大臣奨励賞の滋賀県立八日市高等学校は、全ての作品が高校生離れしたデザインで製図力もあり、センスの良いものであった。実習作品部門への応募は少なかったが、長野県須坂園芸高等学校の作品とその取り組みは大変すばらしく、今回初めて全国高等学校造園教育研究協議会長賞を贈ることにした。

■大間 武
((社)ランドスケープコンサルタンツ協会 参与)
 最近表現術が上手くなりました。但しパースをバードアイでしかもキャドでは無理が生じます。アイレベルでのスケッチを多く入れたほうが現実的でよいと思います。造園ではフリーハンドスケッチは大切です。
 どちらの課題も生活空間のデザインです。美しい事は重要ですが、生活の場であるとことを忘れないで下さい。庭園にはライフスタイルが滲み出ていません。住宅の間取りがあるのですから、そこでの生活をイメージする訓練をしてください。街区公園は準公共的な空間です。周辺の環境への配慮も必要です。
 生活学も重要な科目として教えてください。

岡田 藏司
((社)ランドスケープコンサルタンツ協会 参与)
 今年は全体の傾向として、住宅庭園部門に高校生の力作が多く見られ、街区公園部門に大学生のレベルの高い作品が集中したように思う。これは出展する側である、高校・大学のカリキュラムの違いによるものと思われるが、もう少しバランスの良い応募が望まれる。
 そんな中で、6日造協会長賞を受賞した中村龍斗さんの作品は、庭を見るだけでなく、使うものであるということが良く表現されており、秀逸であった。街区公園部門で入選した三浦美穂子さんの作品は、女性らしい繊細なタッチの図面と花物を多く使って四季感を演出した植栽計画は楽しく、6コンサル協会長賞の岡部諭紀さんの作品は2500u程度の決して広くない公園を立体的でダイナミックに構成したプランニングは見事であり、作図技術も良く、文句のない受賞であった。

高橋 一輔
((社)日本造園建設業協会技術委員長)
 第30回にもなる全国造園デザインコンクールは全体的にレベルの高いものになっています。日造協会長賞の中村龍斗さんの作品は高校3年生とは思われないハイレベルの作品であると評価しています。また、ランドスケープコンサルタンツ協会長賞の岡部諭紀さんの作品は、詳細設計図を加えて即現場で施工するとおもしろい空間ができると思います。滋賀県立八日市南高等学校の文部科学大臣奨励賞は文句なしのものと思います。造園学関連の指導教官のご指導ぶりが目に浮かびます。長野県立須坂園芸高等学校も今回はたくさんの学生が応募され、入選もされて須坂園芸高出身の造園施工界のOBの方々が喜んでおられました。一つの良き行動は、関係方面へのすばらしき波及効果があるということを指導教官の皆様、および学生諸君の皆様が感じ取っていただければ幸いに思います。

■佐藤 岳三
((社)日本造園建設業協会 事業副委員長)
 農業、園芸、農林など学校の名称は色々だが、実学の学校なのだと思う。
 このコンクールでは、3つの課題に対して各々が選択し、応募して頂いている訳だが、特に住宅の庭園に関しては、ここ何年か毎年同じような絵を見ているような感じである。これは前提条件がほとんど変わっていないことにもよるかも知れないが、若い人々の活動的でもっと楽しい生活が想像され、或いは想定されて然るべきだろう。そこからは話が聞こえない、体温のようなものを感じない、なんとも嬉しくないのだ。やはり実学で体当りして欲しい。
 また、実習部分についてであるが、 “かたち”を学ぶ、技術そして技能を学ぶ、確かに必要なことなのだ。しかしここで忘れてならない大事なものは、手段としての技術の先にある目的を学んで欲しいし、教えても欲しいのである。勝手な言い方かも知れないが、実体から実を学ぶ、例えばその意味で地域社会としての関係性をもっと深めた存在であって欲しい。具体的には、公共施設の修景などに場を広げることである。過去には、素晴らしい作品が高い評価を受けた実績もある。この体感や達成感こそが、生徒が自ら味わえる実学の妙味である。

3面

【ふるさと自慢】
第41回 兵 庫 
「再び大空へ」コウノトリ
野生復帰プロジェクトが進行中

コウノトリの郷公園全景。百羽を超えるコウノトリが飼育されている

コウノトリの全身。ヨーロッパのコウノトリと比べると一回り大きい

子育てはとても愛情豊か

コウノトリ文化館 館の中からコウノトリが見える

水路と水田を繋ぐ魚道

田んぼの学校では子どもの笑顔が一杯

 兵庫県の北部、日本海に面した豊岡盆地で、30年以上も前に日本の空から姿を消したコウノトリを再び自然の中に帰していく取り組みが展開されている。一度、自然界から消滅した種をかつての生息地に復帰させることは世界的にもまれで、成功例は極めて少ない。そればかりか、ここでの取り組みは、単にコウノトリという一つの種を蘇らせるだけでなく、コウノトリのような自然生態系の頂点に立つ大きな鳥が生息できる環境こそ人間にとって豊かな環境であるとの認識のもと、人と自然が共生する社会の実現を目指している。「壮大な社会実験」と呼ばれるコウノトリ野生復帰プロジェクトの一端を紹介し、「ふるさと自慢」としたい。

コウノトリって、どんな鳥?
 ヨーロッパでは「赤ちゃんを運んでくる」と言われ、日本では「めでたい」象徴として扱われるコウノトリ。洋の東西を問わず古くから人々に愛され、人々の生活と共に暮らしてきた。白い体と黒い風切り羽のコントラストが美しく、翼を広げると2mにも達する。その風貌からツルと混同されてきたが、食性は肉食であることや樹上に営巣することなど生態が異なり、分類上はサギやトキの仲間に属する。襖絵や花札などで描かれる「松上の鶴」は、実はコウノトリのことだ。ツルは木の枝に止まれない。
  
絶滅と復活の歴史
 かつて江戸時代までは全国各地で生息していたコウノトリは、明治維新以後の乱獲と生息環境の悪化により激減し、気がつくと豊岡盆地周辺だけでしか見られなくなった。この地域が生息地として残ったのは、周囲を囲む里山と低湿な水田地帯、緩やかな河川などが絶好の生息環境を提供していたことに加え、人々の間にコウノトリを大切にする風土があったからだ。
 しかし、第2次世界大戦と、その後、この地域にも押し寄せた各種の開発と農薬によってコウノトリは絶滅の淵に押しやられ、保護活動の甲斐なく、71年、ついに姿を消してしまった。
 これに先立つ65年、兵庫県と豊岡市は最後の保護手段として人工飼育に踏み切った。当初はうまくいかず苦難の連続だったが、89年に初の繁殖に成功してからは毎年ヒナが誕生し、コウノトリは一転して復活への道を邁進することとなった。今では、個体数は百羽を超える。
  
コウノトリの郷公園
 99年、豊岡市内にとてもユニークな公園が完成した。165haの敷地を有する野生復帰の拠点施設・コウノトリの郷公園である。ここでは、コウノトリの人工飼育、研究などを行う非公開ゾーンと普及啓発を行う公開ゾーンとに区分けされ、野生復帰に向けた取り組みが総合的に展開されている。普及啓発の中心施設は「コウノトリ文化館」で、コウノトリのことだけでなく、豊岡盆地の自然や文化、人々の活動の様子が紹介されている。ぜひ、一度訪問してほしい。
 

地域の自然環境の再生
 コウノトリが野生で生活するには、餌となる様々な生きものがたくさんいる自然と、コウノトリを暖かく見守る人々の環境が必要だ。両者は別々のようで、実は一体のものだ。郷の自然は、人々の生業の中でつくられ、生活の一環として維持されるからだ。だからこそ、多くの人々がそれぞれの立場で参加し、コウノトリと共生する郷づくりに取り組んでいる。これまでのライフスタイルを厳しく問い直す者もいる。当地では、数年前からも無農薬農業や水田
・河川・里山のビオトープ化が進んでいる。農道の花植えなど、農村を美しくする取り組みも少しずつ展開されている。やがて、田園の景観が本来の姿を取り戻したとき、コウノトリは里に定着するだろう。
 飼育されているコウノトリは、いよいよ来年から順次放鳥される。

 兵庫県支部 西村 順雄(協力 = 豊岡市)

景観法が閣議決定
我が国初の景観総合法に

 

 都市、農山漁村等における良好な景観の形成を図るため、良好な景観の形成に関する基本理念及び国等の責務を定めるとともに、景観計画の策定、景観計画区域、景観地区等における良好な景観の形成のための規制、景観整備機構による支援等所要の措置を講ずる我が国で初めての景観についての総合的な法律「景観法案」が閣議決定された。同法案の概要は以下の通り。
 景観計画制度の創設
 景観計画の策定

 景観行政団体(都道府県、指定都市等又は都道府県知事と協議して景観行政をつかさどる市町村をいう。)が策定するものとする。また、住民等は景観計画の提案をすることができることとする。
 景観計画区域における
 行為の規制

 景観計画区域内の建築物等の建築等に関して届出・勧告による規制を行うとともに、景観行政団体の長は、必要な場合に建築物等の形態又は色彩その他の意匠(形態意匠)に関する変更命令を出すことができることとする。
 景観重要建造物
 景観計画区域内の景観上重要な建造物を景観重要建造物として指定するとともに、その現状変更には景観行政団体の長の許可を必要とするよう措置する。また、景観整備機構が管理協定を締結し、景観重要建造物の管理をすることができるよう措置する。
 景観重要公共施設の
 整備等

 景観計画に定められた道路、河川等の景観重要公共施設については、景観計画に即して整備することとし、景観計画に定める基準を景観重要公共施設の許可の基準に追加できることとする。また、電線共同溝の整備等に関する特別措置法の特例を設けることとする。
 景観農業振興地域整備
 計画

 景観計画区域内の農業振興地域に景観農業振興地域整備計画を定め、当該区域内における土地利用についての勧告、景観整備機構による農地の権利取得等ができるよう措置する。
 自然公園法の特例
 景観計画に定める基準を国立公園又は国定公園に関する自然公園法の許可の基準に追加できることとする。
 景観協議会
 景観計画区域内における良好な景観の形成を図るための協議を行うため、景観行政団体等は景観協議会を組織することができることとし、景観協議会で協議が整った事項については尊重しなければならないこととする。 
 景観地区制度の創設 
 市町村は、市街地の良好な景観を形成するため、都市計画に、建築物の形態意匠の制限等を定める景観地区を定めることができることとする。 
 景観地区内で建築物の建築等をしようとする者は、当該建築物の形態意匠が景観地区の都市計画で定める建築物の形態意匠の制限に適合することについて市町村長の認定を受けなければならないこととする。 
 市町村の条例で、工作物の建設、開発行為等について必要な制限を定めることができるよう措置する。 
 市町村は、都市計画区域及び準都市計画区域外の景観計画区域において準景観地区を定めて、条例で、景観地区に準ずる制限を定めることができるよう措置する。 
 景観協定の締結
 景観計画区域内の土地の所有者等は、景観協定(承継効あり)を締結することができることとする。 
 景観整備機構の指定
 景観行政団体は、良好な景観の形成のための業務を適切に行う公益法人やNPO法人を景観整備機構として指定することができることとする。

4面

【総・支部だより】

技術研修会・東北地方整備局との意見交換会開催
東北総支部

仙台で行われた意見交換会

 東北総支部では、平成16年2月4日(水)仙台市内ハーネル仙台において会員130余名が参加し、技術研修会ならびに東北地方整備局との意見交換会を開催したので報告します。
 技術研修会は、講演2講座を設け第1は「世にも珍しい成功法則」〜 表現力の魔法〜と題し、東証一部上場企業に勤める会社員と演劇の俳優の2つの顔をもつ感動プロデューサー平野秀典氏の講演、役者として頭と身体で覚えた「表現力」を会社の営業研修に取り入れたところ、会社が類を見ない売り上げ、利益を得て驚異的な回復のきっかけを作った体験を、「相手に伝わる表現力で感動させることで商品が売れる…」と魔法のような営業マン必須の心得等の感動的な話。
 第2は、「郷土種を活かした自然配植技術」と題し、自然配植技術協会会長・国土交通省自然環境アドバイザーの高田研一氏の講演で日本アルプスの安房峠道路緑化ほか多くの法面緑化・道路緑化事例をスライドで解説、「地域、地方を軸としたその地域に合った樹種の選定など自然配植緑化等」についての体験技術の話で、2講座とも大変有意義なお話でした。
 東北地方整備局との意見交換会について、東北地方整備局から黒田建政部長と高橋都市調整官にご出席いただき、「公園ひろば空間等の通年利・活用」「街路樹剪定士等造園技術者の活用」「造園業者への工事発注」の徹底など8項目の要望に対し高橋都市調整官から「街路樹剪定士等の活用、道路植栽等工事の造園工事業者への発注等関係機関に強く働きかけていく…」等の回答をいただいた後、各県支部長が各地区を代表し各地区の造園業界の実情を説明しながら道路植栽工事・管理業務等を造園専門業者への発注等を要望した。
 建政部長からは、大勢の皆さんと対面しての意見交換会は初めてですが、業界の貴重なご意見を聞くことができました。「植栽等の生き物を扱う造園の特殊性を認識したので、上部機関に反映させるため、造園業についての説明資料が欲しい…」との要請もありました。
 意見交換会の後、高橋都市調整官から造園界として関心のある今国会に提出される景観緑三法についての解説をいただきました。
 休憩も取らない厳しい日程でしたが最後は、緑化懇談会で景観緑三法の制定で新たなビジネスの創出など創造しながら会員相互の交流・親睦を深めた。
(東北総支部)

北陸地方整備局との意見交換会開かれる
北陸総支部

 

 昨平成15年12月17日、恒例の北陸地方整備局との意見交換会が新潟市内で開催され、北陸地方整備局からは、的場純一企画部長をはじめ、各部の管理官、調整官及び北陸技術事務所長、国営越後丘陵公園事務所長ら13名の方々が、また北陸総支部からは、岸総支部長以下各県支部代表2名合わせて10名が出席した。
 会議は、整備局石田技術管理課長の司会で進められ、最初に岸総支部長があいさつに立ち、「地方整備局の皆さま方には、公務ご多忙の折にもかかわらず意見交換会を開催させて頂いたお礼に併せ、この会議での検討されたことが緑化事業の推進に寄与するよう努めたい」と述べ、続いて的場企画部長が「社会資本整備重点計画が10月10日閣議決定されたこと、これは、従来の事業分野別計画を1本化したものであり、地方ブロックの重点施策が中心となり5年後の成果を数量的に現しているものである。 
 今後は、この計画に基づき諸政策が実施される。また、平成16年度の公共事業費は、対前年度比3%減の厳しいものとなるが頑張っていきたい」とあいさつされた。
 その後、北陸総支部の提案した国道法面の植栽の推進について等5項目について、それぞれ提案要旨の説明とこれに対する質疑応答等熱のこもった討議が行われ、最後に的場部長から「次回からは、もっとフリートーキングを増やしては」との発言があり、全員賛成し会議を終了した。
(北陸総支部)

情報化社会に対応しパソコン研修を実施
山口県支部

 近年急速な情報化社会の中で、造園業界も社会の流れに迅速に対応できる体制づくりが必要との考えから、山口県支部では、パソコン業務を多くの社員に理解されるよう徹底したパソコンの多様な研修を計画し取り組んできました。
 幸い会員に大変パソコンに精通されている渇コ関植木の藤本宣也氏が進んで講師として協力いただいたこともあり、表計算、EXCELの基本からはじめ、公共事業による効率的書類作成、さらには国土交通省中国地方整備局に協力を求め、電子入札と電子納品及びその体験学習を実施した。
 山口県支部会員の半数以上がISO9000を取得され、これを業務に生かしている。
 山口県の場合、日造協・造園連各山口県支部と6山口県造園建設業協会が一事務所、同一職員で対応しており、各団体がそれぞれ特色ある活動のもとで相互に協力し合える体制づくりに努力しております。
 本県の造園業界も「山口きらら博」以降、公共工事が激減していますが、現在は工事の分離発注等について、発注者に徹底した要請をしており、少しずつ成果が生まれるなか、生き残りをかけ頑張っているのが現状である。
 また、公共事業発注者に対し、造園技術者の常駐制度を明確にすべく、県に強力な働きかけをしているが、県から前向きに検討する旨の回答を得ている。
 この実現に向けては造園業界一丸となって取り組み、技術力のアピールに努力している。
(山口県支部)

市民参加熱高まる札幌雪まつり盛大に
北海道支部

 今年で55回を迎えた「札幌雪まつり」(2月5日から11日の7日間)が例年と同じく、大通公園、ススキノ、真駒内の3会場で開催されました。
 今回は、北海道自衛隊のイラク派遣に絡むテロ活動の噂などに備えて、大通会場は例年の2倍、真駒内会場は4、5倍の警備員を配置したほか、金属探知機や監視カメラを設置するなど、安全上、これまでになく細心の配慮が払われ、主催関係者にとっては、期間中緊張の連続であったと思われますが、まつり自体は、厳重な警備による堅苦しい雰囲気も感じられず、200万人を超える市民と観光客で賑わった一週間でありました。
 特に、メーン会場の大通公園は、終日人で溢れ、大小合わせて205基の氷雪像も心なしか嬉しそうに見える不思議さが、この雪まつりの特徴であり、魅力でもあるように思われます。
 まつり期間中、好天にも恵まれ、遠来の観光客も心ゆくまで、楽しまれたのではないでしょうか。
 毎回、テレビ等で紹介される大雪像は、その大きさといい、精緻さといい、これが雪でつくられたものかと誰もが疑いたくなるほどの出来映えで、人を魅了して止みませんが、近年は、市民参加による小雪像の人気が高まりを見せておりまして、今年は155基の募集枠に783件もの応募があり、約5倍の競争率となるなど、年々、市民の参加熱も高まってきております。
 市民のつくる小雪像も、今ではその出来映えもさることながら、人気キャラクターや時代を風刺したものなど、時流にあった作品が多く、見る人の共感を呼び、雪像を指さしながら、楽しげに語り合う家族連れやグループが、そこここに見られ、これまでにも増して札幌が誇る雪国の一大イベントでありました。
(北海道支部)

【緑滴】

若き技術者の育成

 

 現在の風潮では、職業に対し個人の能力は転職してキャリアアップすることが良いとする業界もあるようですが、建設業界では会社の施工実績と社員の技量、特に監理技術者の施工実績が相互に問われ重要視されています。建設業に従事する技術者を育てるには、いろいろな資格を取得するために、会社も時間と経費をかけています。
 特に現場のおさまりと感性を重視する造園業界では、各会社の理念や個性が一番大事なことで、会社としての自社ブランドを背負った技術者が、早く育ち長期にわたり会社のために技術を発揮することを願っている訳です。
 資格取得に対し今回、厚生労働省が技能検定試験の改正をして、職業高校の在学生は、2級技能検定の受検が可能になり、在学中に2級技能士を取得できるようになったことは、画期的な改正であります。
 この結果、公共工事をする際に欠かせない、国土交通省所管の造園施工管理技士も相互乗り入れが進み、技能士と合わせて、施工管理技士が取得可能であり、若い技術者が造園業界で早期に活躍できることになって、造園を学ぶ生徒と受入れ側の企業においても大いに期待できる改正となりました。
 私事ですが、わが父は福沢諭吉の心訓が好きで、家には大きな額を掲げてありました。その最初の文章は「世の中で一番楽しく立派なことは一生涯を貫く仕事を持つことです」とありました。私は毎日それを見て育ったせいでしょうか、34年間造園の仕事一筋にやってこれました。
 造園業界も良い技術者を育てていかなくては、将来はありません。造園は地球の緑の保全につながる大切な職業であり、一生涯を貫くに価する立派な仕事です。
 業界を挙げて若き技術者を育てて行こうではありませんか。
 伊藤 祐三(東光園緑化梶j

【事務局の動き】

【2月】
3(火)〜5(木)・造園工事基幹技能者認定研修会(大阪)
5(木)・ 褒章受章祝賀会(栗田氏)
6(金)・ 沖縄国際洋蘭博覧会(審査会)
6(金)・ 造園施工管理技術検定委員会
7(土)・ 沖縄国際洋蘭博覧会(表彰式)
9(月)・ 平成15年度全国造園デザインコンクール表彰式
9(月)・ 叙勲祝賀会(大島氏)
10(火)・ 正副会長・常任委員長会議
13(金)・ 福島県造園協会通常総会
13(金)・ 造園連東北ブロック総会
16(月)・ 「広報 日造協」編集会議
17(火)・ 総務委員会(全国)弘済会館
19(木)・事業委員会(全国)
20(金)・総支部長会議
23(月)・長野県造園協会総会
23(月)・ 「かながわのみどりを創り、育てる」集い
24(火)・ 英国王立園芸協会創立200年講演会並びに祝賀会
26(木)・ CI―NET/CAD シンポジウム
27(金)・ 東京都造園建設業協同組合創立50周年記念祝賀会

【3月】
2(火)〜4(木)・造園工事基幹技能者認定研修会(札幌)
11(木)〜13(土)・造園工事基幹技能者認定研修会(鳥取)
15(月)・ 公園緑化技術フォローアップ会議
16(火)・ 建退共評議委員会
18(木)・ 事務局長会議(教育訓練協会)
24(水)・ 淡路花博協会評議員会
24(水)・ 事務局長会議(振興基金)
24(水)・ 公園緑地管理財団評議員会
26(金)・ 都市緑化基金理事会
26(金)・ 理事会
30(火)・ 日本緑化センター理事会