INDEX 広報 日造協 2004年10月10日 第367号
1面

都市緑化キャンペーン 東京・数寄屋橋で開催    
基幹技能者の評価・活用など 建専協で国土交通省に要望
平成16年度造園工事基幹技能者認定研修会実施へ
「都市に緑と公園を」全国大会10月29日開催
     会員各位も多数、ご参加下さい
人事異動 
     国土交通省 都市・地域整備局関係(10月1日付)
【樹林】 『遊び場の『ジレンマ』
     関東学院大学工学部建築学科 助教授  中津 秀之 

2面

【技術レポート No.007】 造園CPD制度の概要
     (社)日本造園建設業協会 技術調査部長 野村 徹郎
【緑滴】 スポーツの起源
     平井 善樹(内山緑地建設梶j

3面

【ふるさと自慢】 第47回(最終回)
     京都  京都盆地と気候風土
「伝統庭技研修」受付中 CPD対応 修景協主催
監理技術者“必須”の“講習会”全国で開催へ
【事務局の動き】
【総・支部だより】
     植栽基盤診断士補研修会 90名が参加、盛況に開催 関東・甲信総支部

4面

【総・支部だより】
     景観緑三法後のまちづくり学ぶ               岐阜県支部
     石川県内で第1号 芝生の校庭が誕生          北陸総支部
     奈良公園の歴史的資産の活用と保全を推進中     奈良県支部  

 

1面

都市緑化キャンペーン開催
                 東京・数寄屋橋

 オープニングイベントで登壇
した主催団体代表者ら関係者

笑顔で応える原田さん

 都市緑化月間における活動として、緑の創出について国民の理解と協力を得ることを目的とする「平成16年度都市緑化キャンペーン」は10月1日、2日の両日、東京・中央区の数寄屋橋公園で開かれた。

  キャンペーンは、「都市に緑と公園を」の全国統一標語のもとに、都市緑化推進運動協力会主催、国土交通省、東京都、都市再生機構、全国知事会、全国市長会、全国町村会が後援し、当協会をはじめ、関係自治体、団体等が協賛して実施。
オープニングイベントが行われた1日は、グリーンアドバイザーによる園芸教室後、オープニングセレモニーを開催。
 北側一雄国土交通大臣をはじめ、浅倉義信東京都建設局次長、竹歳誠国土交通省都市・地域整備局長、伴襄都市再生機構理事長、田邊昇學都市緑化推進協力会会長、高原慶一朗都市緑化基金会長など、都市緑化推進団体の代表らがステージに登壇、あいさつ。
 その後は、各団体代表、日本さくらの女王・藤田真理子さんやプリンセス・チューリップ・野理由紀恵さん、プリンセス・フラワー・山本有希子さん、そして、現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説「わかば」のヒロイン・原田夏希さんも参加して、訪れた人たちに花鉢を配布した。

 

幹技能者の評価・活用など
   建専協で国土交通省に要望

 国土交通省と建設産業専門団体連合会(建専連)との定例意見交換会は9月9日、グランドアーク半蔵門で開催した。
 交換会には、国土交通省から、門松武技術審議官、野村敬明官房審議官、中島正弘官房審議官、中島威夫技術調査官、西脇隆俊建設業課長、最勝寺潔建設振興課長をはじめ23名が出席、建専連からは加盟団体から約60名が参加して行われた。
 冒頭、国土交通省から平成17年度の概算要求、建専連から平成16年度の活動方針――をそれぞれ説明。
 その後、成家当協会会長が13職種、19団体を代表して、「基幹技能者の処遇改善のため、基幹技能者に具体的な活躍の場を与えることにより、現場施工体制の充実、向上を図るとともに、不良・不適格業者の排除と現場の高い生産性の実現ならびに安全で品質の優れた工事施工に寄与するため、基幹技能者の現場常駐を図っていただきたい」との旨を語り、加えて、「現行制度は工事規模によって監理技術者および主任技術者を配置することとしているが、監理技術者と基幹技能者を組み合わせて常駐させるなど、技能者制度を改定し、基幹技能者の位置づけを明確にしていただきたい」との要望を述べた。

平成16年度
造園工事基幹技能者
    認定研修会実施へ

 当協会と(社)日本造園組合連合会との共催で、造園CPDに対応した「造園工事基幹技能者認定研修会」を実施する(日程表参照)。
 研修会のご案内は、「広報日造協」11月号に同封し、各会員へ直接お送りする予定。各会場とも申込締切りは開催初日の30日前です。ぜひご参加ください。

「都市に緑と公園を」
全国大会10月29日開催

 会員各位も多数、ご参加下さい

 「都市に緑と公園を」全国大会は10月29日(金)、午後1時から3時30分、東京・千代田区日比谷公園の日比谷公会堂で開かれる。
 全国大会は(社)日本公園緑地協会(田邊昇學会長 TEL03・3265・8551)が主催。大会は、広く全国各地から地方公共団体や緑化運動の担い手など、緑に携わる方々が参集し、都市の緑の保全・創出に対する意識の高揚を図り、緑豊かな美しい街づくりを全国各地に展開するため開催。

人事異動 
国土交通省 都市・地域整備局
             10月1日付


 ▼大臣官房付・即日辞職=笹倉久(愛知県建設部公園監)
 ▼辞職・9月30日付(愛知県建設部公園監)=藤原宣夫(国土技術政策総合研究所環境研究部緑化生態研究室長)
 ▼国土技術政策総合研究所環境研究部緑化生態研究室長=松江正彦(内閣府沖縄総合事務局国営沖縄記念公園事務所長)
 ▼出向(内閣府沖縄総合事務局国営沖縄記念公園事務所長)=上島晃嗣(都市・地域整備局公園緑地課緑地環境推進室長)
 ▼都市・地域整備局公園緑地課緑地環境推進室長=西川嘉輝(関東地方整備局国営昭和記念公園事務所長)
 ▼関東地方整備局国営昭和記念公園事務所長=大橋謙一(大臣官房付)

【樹林】
『遊び場の『ジレンマ』
関東学院大学工学部建築学科
助教授 中津 秀之
    

 

 

  遊び場は、ジレンマの宝庫である。
 例えば、安全な遊び場は魅力に欠けるというジレンマ。小さな怪我が、こどもの適応力を高めると知りつつ、「もっと怪我しろ」と言えないジレンマ。遊具周辺を緩衝材で舗装すれば安全だと分かっていても、工事費が足りないジレンマ。公園は増やして欲しいが、自分の家の横はやめて欲しいというジレンマ。そして手軽に訴訟できる社会は民主的だと思いつつ、その結果、遊具が撤去されるというジレンマ。ナドナド数え切れないジレンマを詰め込んで、公園は爆発寸前の状態である。
 箱ブランコの事故報道をキッカケに、国民の多くが遊具の安全を危惧し、国は焦って安全指針を取りまとめ…と、ほんの数年間で、遊び場を取り巻く社会環境が様変わりしたことは歓迎すべきことかもしれない。しかし注目度がアップした一方、今まで地域で守られてきた『規範』が全国共通の『規則』に押し流されてはいないだろうか。特に遊具の安全基準を守りさえすれば、遊び場に問題は起きないと信じてはいないだろうか。
 アメリカやヨーロッパにおける遊具の安全基準を参考に、日本の『都市公園における遊具の安全確保に関する指針(平成14年3月)』がまとめられた。しかし安全基準の先進国のアメリカでは、「安全基準を施行した後も遊具事故は減少していない」という調査研究が報告されている。さらに安全基準によって遊び場の魅力が減少した結果、こども達は公園の外で、そのチャレンジ精神を満足させようと、多くの危険に遭遇しているとも言われている。
 遊び場を取り巻く社会のインフラ(基盤整備)として、法整備や情報のネットワークは進んでいる。しかしそれらを使って、どのような遊び場を創っていくかの議論が全くなされていない。これは高度成長期において、基盤整備とその上に創り出されるべき都市象のズレを増長させた国土建設のプロセスと良く似ている。
 地方の時代と言われ久しいが、今まさに求められているのは、遊び場を『核』とした地域コミュニティの構築であり、地域独自の議論である。そのためには、遊び場を全国共通の基準で『評価』するのではなく、地域住民の価値観を基にした『判断』によって育むことを考えなければならない。遊び場について真剣に考えることは、こども達の将来に大きな影響を与え、ひいては国の未来像にも関わる問題である。これこそ『21世紀の富国強兵』かもしれない。

2面

【技術レポート No.007】
造園CPD制度の概要
(社)日本造園建設業協会
技術調査部長 野村 徹郎

 

 

 造園の様々な分野で活躍する技術者を対象として、継続的な専門能力開発を目的とする継続教育制度「造園CPD制度」(CPD=Continuing Professional Development)がスタートしました。国際化が進み、社会が複雑多様に変化している現在、技術者の社会や公益に対する役割や責任の認識を向上すると共に、技術者の相互交流や国際的な相互認証への対応が求められています。技術者は、倫理観と責任能力を持って社会に貢献できるよう、自己の能力の維持とさらなる向上を目指すためにも、様々な技術や知識の継続的な教育が求められ、習得結果の第三者評価も必要とされています。「造園CPD制度」は、造園分野の技術者に対して、継続的な専門能力の開発を支援するとともに、自己学習の実施状況を証明する役割を持っています。

 「造園CPD制度」の実施は、平成16年度は試行期間として行っていますが、平成17年度からの本格実施に向けて、日造協も含め造園に関係する多様な団体が参加する協議会により、それぞれの団体の意思も反映させながら、造園界にとって最もふさわしい制度となるよう、プログラム、システム、広報などについて現在も検討を続けています。
 また、すでにCPD制度を実施している土木学会、農業土木学会、建築学会等の建設系技術を基盤にした学協会とも連携を図るため、プログラム等を共有できる制度の検討も進められ、各学会を通じての相互認証を図るために、6日本造園学会が「造園CPD制度」のプラットフォーム学会となっています。
 「造園CPD制度」は学会・大学・行政・設計・施工など、すべての造園技術者のために構築される制度ですが、今回は施工に携る技術者にとって「造園CPD制度」とは何か、その意義や活用について解説します。

造園CPD制度の目的
 「造園CPD 制度」は、造園技術者が、種々の講習会やシンポジウムの受講、論文・作品等の発表、研修、技術指導、業務経験等を通して、継続的に自己の技術・知識の幅を広げるとともに、倫理観の涵養に努め、自らの責任において技術的に的確な判断を下し、適正に業務を実施することによって、技術者としての社会的使命を果たせるようにすることを目的にしています。
 施工に携っている技術者は、シンポジウムの受講や論文の発表などを行うチャンスはなかなかないかもしれませんが、技術研修や講習会への参加、技術指導などを行うことで、あるいは、造園の専門書や専門紙を購読すること等でも学習を続けているのです。
 いろいろな場所や場面で行われている教育の機会を公開し、参加するチャンスを増やすことと、学習に費やした時間をCPDポイントとして判りやすく数量化し、第三者証明を行うことも「造園CPD制度」の大きな目的となります。


「造園CPD制度」で対象としている継続教育の内容
 造園CPDの対象者は、原則として造園技術者及び造園に関する分野の技術者(学生も含む)で、造園CPD協議会へ登録した者とします。造園CPD協議会参加団体の会員でなくとも、6日本造園学会の認定プログラムを受講でき、かつ登録できますが、会員には、登録料及び証明書の発行手数料に会員価格(割安)が適用されます。
 おもな形態として以下のようなものを対象としています
 @講習会・研修会・シンポジウム等への参加(受講)A論文・作品等の発表、コンクール・設計協議への参加 B職場内の研修 C講師・審査員等の技術指導 D賞の受賞、特許取得等の業務経験・成果 Eその他(専門誌購読等の自己学習、技術会議への出席等)
 上記の教育内容に費やした時間をCPDポイントとし、どれだけ学習したかを証明するものですが、内容によって重み付けという考え方が採り入れられます。
 基本は、CPDに費やした1時間を1ポイントとしますが、CPDの効果が高いと思われる、講師や指導、発表などは重み係数を考慮して、ポイントを加算するというものです。
 CPDのポイント対象には、施工や管理等に関して、発注者や団体(公益法人等)から、表彰状や感謝状を受領した場合なども該当します。

造園CPD 制度の運用
 ・CPDプログラムの提供
 造園CPD協議会の参加団体の主催行事、日本造園学会の本部・支部・委員会の主催行事等を、造園CPDプログラムとして認定し、公表します。
 CPD協議会の調査では平成14年度に造園教育は年間400プログラムも行われていますが、地方が少ないことや、会員限定のプログラムが多いなどの課題が挙げられています。
 造園CPD制度の認定プログラムとすることで、新しいプログラムの開発、各団体での共催、参加料の割引など造園技術者が参加しやすいプログラムの提供にも役立つことになります。
 ・CPD記録簿への記入
 造園CPD 協議会が発行する「CPD記録簿」に自己の継続教育実施の都度、学習記録として所定事項を時系列的に記入。適時証拠となる関連書類を整理保管します。
 「造園CPD制度」を利用するためには、まず登録をしますが、現在は試行中なので、CPD記録簿を付けることから始めます。
 記録簿は、エクセルファイル形式でダウンロードすることができます。(パソコンを利用しない場合は手書でも対応しています)
 記録簿を入手したら、@自分が実施した継続教育を所定の記録簿に記入する A定期的( 1 年に1 回程度)に、造園CPD協議会に記録簿の写しを送る B自分の継続教育の実施状況について証明書が欲しい時に、造園CPD協議会に申請して証明書を発行してもらう―――ということになります。
 本格実施の際には、CPD参加者の利便性を高めるため、WEB上での記録入力、CPD登録者に磁気カードの会員証を発行し、講習会などの場にカードリーダーを設置し、自動記録をする方法が検討されています。
 ・CPD記録簿コピーの提出
 造園CPD 協議会にCPD 記録の登録を希望する者は、登録手続き後、年に1回程度、CPD 記録簿のコピーを造園CPD 協議会へ提出。造園CPD 協議会は、個人情報としてこれを管理します。
 ・CPD実施証明書の発行
 個人が実施したCPDの証明が必要な際は、造園CPD協議会に申請すると、登録内容に基づき、CPD実施に関する証明書を有料で発行します。

「造園CPD制度」に登録するメリット
 CPD制度による実施証明書をもとに、以下のようなことが期待されます。
 @技術者の能力評価への活用 A技術者の所属組織(企業等)の評価、ISO9001 の教育訓練成果への活用 B技術者資格を保有する者は、当該資格で求められるCPDの証として活用(予定)C職場内での昇進・昇給、異動の際の資料として活用D技術者が所属する組織(企業等)の評価に活用E職場内での昇進・昇給、異動の際の資料として活用
 今後は、公共工事の発注等でも、CPDポイントにより、技術者の能力を評価することや、配置の義務付け、第三者によって証明された優秀な技術者を多く雇用する企業を評価すること等も考えられます。
 まだ始ったばかりの「造園CPD制度」ですが、施工に携る技術者の期待も高まっています。
 おわりに、造園CPD協議会の資料「造園CPD制度の構築に向けて」の一部から「CPD関係者から皆様へのメッセージ」をご紹介します。

〜 学会・大学・行政・設計・施工の立場から、CPDに期待する〜
 施工に携わる一技術者として「個」の時代が叫ばれて久しい。公共工事においてほんの一昔前まで、「図面どおりに寸分違わず造れ」といわれ、造園的感性を生かす場が少なく土木的に正確な仕事に腐心してきました。
 「造園工事は感性を生かし、楽しんで仕事をすべき。楽しみを与える空間を作るのだから…」との議論も一部でされてはいましたが、世の中の要求に応えるために、とにかく図面どおりに次々と造っていました。
 その後、時代が変わり、「設計意図を、さらに良く具現化する方法があれば、どんどん提案するように」といわれ、ようやく「苦しいけれど楽しい」仕事を少しずつできるようになりました。
 となると、今度は我々が、造園を幅広く勉強し、期待に応えていかなくてはなりません。
 このような現実に身を置く者にとって、このCPDは力強い助けになってくれると期待します。
 原論、設計、環境、福祉など自分が知りたいこと、身に付けたい最新の技術を多くのプログラムの中から探し出すことができ、自分の学習努力の足跡を学会が管理・証明してくれるのです。自己管理や自己アピールも苦手な私のようなものにとって、ありがたい制度です。
 なお、「造園CPD制度」に関するさらに詳しい内容、プログラム総覧・記録簿などは日造協のホームページからのリンクまたは、造園学会のホームページの「造園CPD制度」のページで入手することができます。
http://www.landscapearchitecture.or.jp/cpd/cpd_index.html

【緑滴】
スポーツの起源
平井 善樹(内山緑地建設梶j

 今年は久しぶりにギリシャの首都アテネでオリンッピクが開催された。
 「久しぶり」と言うのはフランス人クーベルタンの提唱により「近代オリンピック」が復活し、第1回大会がオリンピック発祥の地アテネで開催されたのが1896年であったから、それから数えて108年ぶりに、2度目の大会となるわけである。
 第1回の「五輪大会」(オリンピックの別名)では参加国13、選手数285名であったことを考えると、わずか1世紀と少々で今年の参加国が202、選手・役員約1万6千名になろうとは、いかに「近代オリンピック」が4年ごとに盛大になっていったかを示していると言えよう。
 オリンピックの歴史は「古代」と「近代」に大別されている。
 古代オリンピックはすでに紀元前331年に行われていたようである。
 ペロポネス半島の西部にあるオリンピア(オリンピックの語源)地域でギリシャの最高神「ゼウス」を祀るための祭典を催すかたわら「奉納」の行事として小規模ながら「競技」が行われていたようである。
 これがオリンピックの起源と言ってよいだろう。
 その後地中海周辺の国々が戦乱に巻きこまれ、その上地震等の天災地変により長い間中断され、オリンピアに始まった古代オリンピック以後記録はほとんど残っていない。
 そこで一足飛びに「近代オリンピック」の話題になるのだが。
 19世紀末なると、にわかに古代オリンピック復活の運動が盛んになり、前にも述べたように、フランス人クーベルタンの提唱により国際オリンピック委員会(IOC)が組織され、4年目ごとに世界の各国にまたがって開催されるようになったのである。
 2度にわたる世界戦争のためベルリンと日本での開催が中止されたことはあるが、ほぼ百年以上にわたって「五輪大会」は開催されているのである。
 21世紀の今日に至っても尚イラクのテロリズム、イスラエルとパレスチナとの抗争が続いていることを見るにつけ、人間が人間である限り「怨恨」というものが消え去ることのないのを知ることが出来るであろう。
 ギリシャの人々は「トロイ戦争」という国を挙げての騒乱を経験することにより、人間の心の奥に潜む「闘争本能」なるものが如何に根強いかを身を以って知ることができたであろう。そこで、これを如何に鈍化し、昇華するかを考えて「スポーツ」なるものを生み出したのだと思う。 
 スポーツも一つの戦いではあるが、それは一定のルールの下で行われるものであって、それが終われば、憎しみ合うことも殺し合うこともありえない。
 オリンピックを観戦していると、勝負が終わった後で選手がお互いに抱き合って相手の戦いぶりを讃えている光景をよく見かけるのである。そこには憎しみや恨みはかけらも無い。これこそ「スポーツマンシップ」と言えるのではなかろうか?
 今回のアテネ大会では、メダル総数過去最高36個、金メダル16個を獲得した。
 若い選手が目立つ中で、平泳ぎで二個の金メダルを獲得した北島康介選手は「チョーきもちいい」と叫び、女子マラソンで過酷なレースを勝ちきった野口みずき選手は「幸せです」と微笑んだ。            
 2004年のアテネ「オリンピック」が世界平和の樹立に大いに貢献し、次回北京大会でもメダルラッシュを期待したい。

3面

 

【ふるさと自慢】
47回(最終回)
京都  京都盆地と気候風土

 

屏風のような山々と独特の地質で
湧水に恵まれ、まさに山紫水明の
地となっている

京都の風情をかもし出す山桜


 

 


 京都盆地は、東・西・北部を山に囲まれ、南部が開けた典型的な複合扇状盆地である。東山と桃山丘陵を挟んで東側に山科盆地を伴っている。
 東西約10q、南北約20qの細長い盆地の三方を、屏風のように囲む山々は、北西の愛宕山と北東の比叡山が双峰をなして聳(そび)え、その北方には標高6、7百mの峰々が峡谷を刻み、東山と西山のなだらかな山並みに続いている。
 平安京が造営された延暦13年(794年)10月28日の『日本紀略』に「此の国山河襟帯、自然に城を作す」と記されるとおり、まさに王城を築くに適した地であった。
 地質は、北へ行くほど古生層で、チャートと呼ばれる岩盤を主に、その上に長い期間の中で土壌が出来上がっている。チャートというのは、京都が海の底であった頃に、海中の微小生物の死骸が堆積してできた岩である。
 この上に形成された土壌は、鞍馬・貴船をはじめとする北山から愛宕山系を回って、西山丘陵の大原周辺部くらいまで、大半がいわゆる瓦礫層をなす。この麓に形成された扇状地である京都市街地の大部分は、したがって瓦礫層の上に肥沃な細粒土層が固まった地質である。
 さらに、比叡山系から東山にかけては、風化しやすい花崗岩の砂質土、いわゆる白川砂層が入り込んでいる。
 南方は、低地へ行くほど、大阪層群と呼ばれる海成粘土層、いわゆる泥土の乾燥した厚い堆積層と変わる。また、東山南方は、深草層群と呼び慣わす、砂粘土質の硬く締まった土質となる。
 桜をはじめ、大半の植物は、瓦礫層、つまり瓦礫まじりの肥沃土のところで非常に良く育つのである。また、その周辺部は必ず瓦礫層であるがゆえに、山中で補水され、地下に浸み込んだ水が徐々に浸み出してきて、澄んだ湧清水となり小川を作っている。そしてそれらが集合して、鴨川や桂川といった大河となって南下している。
 市街地の中心部を南北に縦割りにしてみると、北部の上賀茂から南部淀の間は、およそ75mの高度差で、ゆるやかに傾斜しているために南部を除く市の大半の地では、瓦礫層であることとあいまって、大変水はけがよい。
 ちなみに瓦礫層を抜けて浄化された清らかな水は伏流水となって深草まで南下し、そこで大阪層群の粘土層に突き当たって地表へ押し戻される。このきれいな湧水に恵まれて、昔から伏見は酒どころとなった。
 風向についていえば、京都では年間の70%くらいまでが、北西から南東、または北から南への風が吹く。その北西方向には、大都市・工場がない。大陸の気圧がそのまま流れ込むわけであるが、大陸から出た空気は日本海を通る間に蒸散作用によって浄化され、日本列島に入ると丹波高地の山並みに当たって、そこでやや穏やかな内陸部の気候になって初めて京都市内に入る。
 このようにきれいな水と澄んだ空気に恵まれた、まさに山紫水明の地であった。
 また、盆地であるがゆえに、局地性の雨や夕立が多い。霧も多く、湿度は適度である。乾燥すべき時は乾燥し、夏は暑く、冬の冷え込みも強い。そういう諸々の条件がうまく作用して、京都の自然には多種多様な植物が育っているのである。
 また、多様な植物が育つことによって、あらゆる小動物、小鳥、昆虫が共存する豊かな環境が保たれてきたわけでもある。
 さらには盆地特有の逆転層現象というものがある。冷たい空気は風のない盆地の底に溜まり、地表から逃げた熱が上空に漂って暖かい空気の層をつくるもので、この層の高さがだいたい地上2、3百m。市の南部ではこの標高の山肌斜面に茶畑が発達している。現在では市街化によって多く姿を消したが、市街中心部より2、3百m上がった北部の高野や修学院方面、西京区一帯にも茶畑が多く見られたものである。
 また、北山、東山、西山では、この高度くらいの山里に小鳥が非常に多い。花の蜜を求めるこれらの小鳥や昆虫によって、花粉が運ばれて、桜の結実作用が行われ、桜の実を食べた小鳥の脱糞作用によって、新たな地に運ばれた種子から、随所にヤマザクラの自然生えが見られる。こうした相互作用で、実に上手く自然が保たれ、ヤマザクラの宝庫であり得たのである。
 こうした自然状況から、京都の桜は北西部に特に多く、南へ行くほど少なくなる。
                         (京都府支部事務局長・荻野 靖也)

 

「伝統庭技研修」受付中
    CPD対応 修景協主催

 (財)日本造園修景協会(修景協)は造園CPD制度の対象となる「平成16年度伝統庭技研修会」を11月25日、26日の両日開催。当協会が後援する。
 研修会は、京都タワーホテルで実施。初日は講義で、翌日は、今までに一度も企画したことのない重森三玲氏作庭の東福寺本坊方丈庭園をはじめ、龍吟庵などの庭園見学を予定している。
 講義は、「伝統庭技の継承・その伝統と創出・造園技法の本質論〜石と匠等」尼崎博正京都造形芸術大学副学長など。
 参加費は修景協会員21000円、非会員24000円。見学料は8000円。問い合わせは同協会 TEL03・3262・5730。

 

監理技術者“必須”の“講習会”
           全国で開催へ

 公共工事の監理技術者を担う人を対象に、(社)全国建設研修センター、7建設業振興基金などの主催で、建設業法に基づく、監理技術者講習会が開催される。
 公共工事の監理技術者になるには、国土交通大臣の登録機関が行う「監理技術者講習」の受講が義務付けられている。
 全国建設研修センターの講習は全国31カ所で実施、各地で複数会場、複数回開かれており、11月から来年3月までのスケジュールも発表済み(www.jctc.jp、03・3581・0847)。東京では2会場10講習が予定されている。
 建設業振興基金は、全国34会場で実施。詳細は、03・5473・1586、www.kensetsu-kikin.or. jp/honbu/ 。
 なお、両講習ともに、講習は1日間で、講義終了後に試験が行われ、修了証は5年間有効。受講料は12300円となっている。

 

【事務局の動き】

【9月】
1(水)・造園CPD推進委員会
2(木)・ 「広報日造協」編集会議
3(金)・ 建設系CPDシステム委員会
6(月) 〜10(火)・第46回日本公園緑地全国大会および第20回IFPRA世界大会
7(火)・ 緑化フェア庭園出展コンテスト
8(水)・ 広報セミナー
9(木)・ 国土交通省本省と(社)建設産業専門団体連合会(建専連)との定例意見交換会
10(金)・ 植栽基盤診断士判定委員会
13(月)・ 職業能力評価制度整備委員会
14(火)・ 建設雇用改善推進事業ヒアリング
15(水)・ 全国意見交換会東北総支部
16(木)・ 全国都市緑化祭
21(火)・ 都市緑化推進運動協力会
21(火)・ 全国意見交換会関東・甲信総支部
27(月)・事業委員会(在京・全国)
28(火)・ 造園CPD推進委員会
29(水)・ 建設系CPDシステム委員会

【10月】
1(金)・都市緑化月間街頭キャンペーン
2(土)・ しずおか国際園芸博覧会閉幕展示会国際コンテスト審査会
4(月)・ 「広報日造協」編集会議
6(水)・ 建設業退職金共済制度加入促進等連絡会議
7(木)・ 国際ユース庭園フォーラム
7(木)・ 建専連全国大会
7(木)・ 中央職業能力開発協会理事会・臨時総会
7(木)・ 全国意見交換会九州総支部
11(月)・しずおか国際園芸博覧会閉会式
13(水)〜15(金)・造園工事基幹技能者認定研修会(山口)
13(水)・ RLA資格認定試験検定委員会
14(木)・ 全国意見交換会中部総支部
19(火)・ 戦略開発特別委員会
20(水)・全国建設産業教育訓練協会事務局長会議
29(金)・ 「都市に緑と公園を」全国大会

【総・支部だより】
植栽基盤診断士補研修会
90名が参加、盛況に開催
         関東・甲信総支部

研修会のもよう(さいたま市)

  
 関東・甲信総支部では、8月25日から27日までの3日間、さいたま市の埼玉県産連会館において、植栽基盤診断士補研修会を開催しました。
 初日の開講式は、和田新也総支部長のあいさつで始まり、来賓としてお迎えした国土交通省関東地方整備局建政部の二宮都市整備課長補佐にあいさつをいただき、山田総務、田村技術、望月事業各委員長が出席する中で行われました。
 2年目となる本年度は、受講者数のことを心配していたのですが、90名の登録があり、講師陣の努力と熱意のもとに、充実した講義が展開されました。
 3日間の座学では、第1部から第4部まで10名の講師がそれぞれ分担し、修了試験の立会いや採点には8名の認定講師が対応。8月28日に行った記述式問題の採点は各支部より10名の講師が参加しました。
 このほか、会場設営や運営に関しても、埼玉県支部や事業委員会の方々の沢山のご協力をいただきました。
 今年度は、講義の充実を図り、合格率の向上のため努力していただきましたので、良い結果が出るものと期待しております。
 関係各位に感謝申し上げるとともに、概要を報告しました。植栽基盤診断士制度の重要性を充分にご理解いただき、来年度も多くの方々が、受講していただく様お願いします。
                    (関東・甲信総支部 事業委員長・望月勝保)

4面

【総・支部だより】
景観緑三法後の
まちづくり学ぶ
             岐阜県支部

シンポジウムのもよう

 

広場で実施されたパネル展示

  
 全国景観会議(会長=野本孝三)主催による景観シンポジウム全国大会が9月15日〜16日の2日間、岐阜県高山市の飛騨・世界生活文化センターで開催され、多数の支部会員をはじめ約500人が参加した。
 初日の15日は、13時より、野本孝三会長はじめ主催者の開会あいさつのあと「景観法制定後のまちづくりのあり方」として、西村幸夫東京大学教授の基調講演、引き続き国土交通省による景観法説明が行われた。
 講演や報告では、時の移り変わりにより、景観・観光への関心の高まり、量の充足から質の向上への基本姿勢の転換などを背景として景観法が制定された。うわべだけの化粧の美観ではなく、まわりの環境を考えた地域にふさわしい景観づくりを推進することが基本である――などの旨が語られた。
 また、15時30分からの「事例発表」は、地方公共団体の部で「女鳥羽川・ふるさとの川整備事業」「福岡県の美しいまちづくりと専門家派遣制度」「倉敷市の町並保存」「島原市における景観行政」の4事例。まちづくり団体の部は、美濃市の「うだつのあがる町並み」 彦根市の「夢京橋キャッスルロード」、徳島市の「川を生かしたまちづくり」の3事例が発表された。
 そのほかの事例発表では、大会議室と会議室の3会場で、日本電気梶A(財)都市計画協会、九州工業大学、潟sープルメディア、松下電工梶A潟pスコなどによる第3次元景観データを基に新たな面開発への活用事例を展示紹介。中心広場のウェルカムプラザでは、岐阜県内の国道事務所・建設事務所・市町村などのパネル展示と岐阜県寄せ植え華道協会々員による花飾りが設けられ、全国から集まった人達を歓迎した。
 なお、16日は高山市、飛騨市、白川村に分かれての分科会、現地視察へと流れて終了となった。
                                 (岐阜県支部・門順子)

石川県内で第1号 
芝生の校庭が誕生
            北陸総支部

児童が参加しての芝張り

引き渡し式終了後は、
サッカーやピラミッドの組体操など
で芝生の感触を楽しんだ

 石川県内の平成15年度・学校の緑化についての調査研究プロジェクトが立ち上げられ、資料収集、先進地視察、大学の先生の助言などを得ながら、活動が続けられてきた。
 プロジェクトは、(社)石川県造園緑化建設協会で実施。調査・研究は石川県支部会員らを中心に進められ、平成16年度はその成果の一部である校庭の芝生化を実現すべく、金沢市教育委員会や市内の小学校数校と協議を行い、四十万小学校をモデル校として実施することとなった。
 具体的な事業は、同小学校の校庭の3分の1に当たる1800uを芝生化することとなり、金沢市緑化造園協会が協力、石川県支部会員も参加し、施工、材料、工事費用を無償提供した。
 すでに、四十万小学校の芝生化は6月15日に着工、7月30日には同校の6年生95名も芝張りに参加。1カ月半の養生期間を経て、9月22日に引渡し式を行った。
 当日は、前日の降雨のため同校体育館で開催。金沢市長、教育委員長にもご参加いただいて挙行された。式典では、芝生造成の経過に関する映像の上映にはじまり、校長先生からのあいさつ、石川県造園緑化建設協会長あいさつ、目録の贈呈、市長のお礼のあいさつに続き、感謝状が両協会に贈呈され、最後に各学年代表の児童がそれぞれ、芝生のグランドで活動できることへの喜びを語った。
 式の終了後は、児童たちが雨上がりの緑鮮やかなグランドへ飛び出し、市で購入した芝刈り機の操作を習ったり、芝生に転がったり、腕相撲やピラミッドの組体操をしてみたりするなど、思い思いに芝生の感触を楽しみ、大はしゃぎとなった。
                          (北陸総支部 事務局長・田町靖夫)

奈良公園の歴史的資産
の活用と保全を推進中
             奈良県支部

 

平城京左京三条二坊宮跡庭園
(全景)

 

平城京東宮庭園
(一部)

 奈良公園での夏のイベント「なら燈花会(とうかえ)」が今年も8月5日から8月15日まで行われ、奈良市内や市近郊ばかりでなく、大阪、京都方面からも凉と懐古的な雰囲気を求めて、多くの見物客が訪れました。
 公園内にある奈良県新公会堂前の浮雲園地や浅芽が原、鷺池の浮見堂などに美しくデザインされ、並べられた1万数千本のロウソクが一斉に灯っている光景は、見る人の心を遠い天平の世界に誘(いざな)いました。
 公園の管理は現在、奈良公園管理事務所が直営で行っていますが、長らく県内の造園業者が公園施設の整備や若草山や公園内の芝張工事などに関わってきました。
 現在では、件数が激減していますが、公園内の整備工事などで、奈良公園の維持管理に携わっています。
 また、平城宮跡は、独立行政法人奈良文化財研究所(前奈良国立文化財研究所)によって、発掘調査が継続して行われていますが、調査が終わった庭園遺跡などは、復元工事が行われます。
 すでに、復元が完了している庭園としては、平城京左京三条二坊宮跡庭園や平城京東院庭園があります。これらは、奈良時代の貴重な庭園遺構です。飛鳥時代の庭園は、朝鮮半島の影響を受けていますが、奈良時代は、中国大陸の庭園様式を取り入れています。
 前記2つの庭園は、日造協奈良県支部の会員2社がそれぞれ請け負い、奈良文化財研究所の厳しい指導、監理のもと、見事な天平の庭が再現されています。
 現在も発掘作業が続いており、また近い将来、古代の庭の再現工事が行われると思います。
 6年後の2010年は、平城遷都1300年に当たります。私たちは、飛鳥、斑鳩(いかるが)、奈良など、多くの史跡や世界文化遺産が点在する奈良県の歴史的風土を守るため、さらに研鑽に励み、造園技術を通して、古代大和の文化を広く、多くの人々に語り継いでいきたいと願っております。
                       (奈良県支部 事務局長・石岡喜代麿)