3面
|
2 都市公園行政と広報
― 根拠明示し、より市民向けに
|
国土交通省
都市・地域整備局 公園緑地課 緑地環境推進室
西川嘉輝室長に話を伺った |
|
マスコミへの情報発信等関心呼ぶテクニックも必要
都市公園行政の場合、簡単に言うと、財政が厳しい中で、いかに公園緑地の整備を進めていくかという課題があり、そのため、公園緑地の必要性や効果を知ってもらい、予算確保に当たるという使命がある。
具体的には、国土交通省が頑張っている取り組みを紹介し、国民から賛同を得て、この結果が、予算や施策に反映されることになる。
都市公園行政は、市民に身近なこともあり、4月と10月の春秋の緑化キャンペーンをはじめ、国の中でも早くから、市民を意識してきたが、それでも以前はどちらかというと、施策への理解や利用など、都道府県向けの広報であったといえるかもしれない。 しかし近年、公園緑地の整備推進や施策に理解を頂くためには、もっと深く国民の皆様に知ってもらうことが必要であることから、より話題性のあるテーマとして、新潟県中越地震や屋上緑化などを例にあげ、さらに、単に「緑は必要です」「緑はいいですね」ではなく、広報においてもデータを示しながら、緑が必要な理由をきちんと説明することを心がけるようにしている。
例えば、平成17年2月に発効した京都議定書では、日本は1990年の時点からマイナス6%を削減する必要があり、その推進計画が閣議決定されている。
計画では、都市緑地への期待は大きく、これには3つの根拠があり、@直接CO2を吸収する A身近な存在であることから国民一人一人の意識の啓発につながるB都市部のヒートアイランド現象に効果がある――からだ。
都市緑地が直接CO2を吸収する割合は、国土レベルの森林からすると量的には小さく、都市部の地価や苗木ではなく高木を植栽する場合が多いことなどから、それだけを見れば費用対効果はあまり高くないといえる。しかし、ヒートアイランド現象は、都市型洪水などにも関係し、さらなるエネルギー使用などにもつながり、その緩和効果のメリットは大きい。
また、啓発面での期待も大きい。日本は省エネ機器の普及が進んでいるので、ちょっとのことでは、大幅な削減にはつながらず、逆に我々の生活は、さらに多くのものが機械化、電化され、エネルギーの消費は拡大傾向にある。こうした中で、大幅な削減をするためには、ライフスタイルが変わるくらいまでもっていかないとならないが、都市の緑はその機会を作る可能性を持っている。国民に最も身近な吸収源対策である都市の緑化活動へ参加することで、地球温暖化問題を身近な問題として捉え、自分自身の生活改善へつなげていく。そのような役割も都市緑化に期待されている――という視点をしっかり持って広報を行うことが重要と考えている。 また、データに基づいて、明確に情報を提供するだけではなく、やはり関心を引くように、使ってもらえるようにするテクニック、見せ方も必要だ。
ホームページに載せておくだけでは、例え有用な情報であっても効果的とは言えない。活用されてこそ、広報の意味がある。そこでもっと検索しやすく利用しやすいように構成を見直し、データの更新も速やかにするように今年7月頃に国土交通省のホームページ内の「公園とみどり」を改善している。なお、これらの改善効果を把握するため公園だけのアクセス数のカウントが出来ないか検討しているところである。
また、記者発表も広報手段としては極めて重要だ。従来から春秋のキャンペーンやみどりの愛護の集いなど、各種催事や通達などは、直接関係者に広報するだけでなく、記者発表を通じた広報を行ってきた。
しかし、より積極的な広報を行うために、今年は6月に壁面緑化の効果、8月にバイオラングの効果速報など、調査結果などのデータについても記者発表を行った。 2つのデータの記者発表は、暑い時期の方がタイムリーで、取り上げてくれる可能性、大きく扱ってくれる可能性が高いと考えたからで、こうした記者の方々、読者の方が関心を持つ内容、時期を考えることも大切。新聞や情報誌などに取り上げてもらうために、プレスリリースの工夫をあれこれと考え、記者の方が使いやすいようにする工夫、リリースする時期なども、記者の方が休み前に、記事を溜め込んでおきたい時期を狙ったりすると効果的だ。こうした工夫も広報を効果的に行うための大切なポイントといえる。
伝えたいという想いがあれば、いかにして伝えるかを考えるはずで、その想いの強さ、大きさが広報にも反映されてくるのではないか。
一方で、早くから取り組んできた春秋のフェアなどは、マンネリもあってかなかなかマスコミが取り上げてくれなくなってきてしまっているので、何らかの対策が必要になってきている。
平成17年度秋の緑化キャンペーン中央行事として、銀座・数寄屋橋で行ったイベントには、プロレスラーの佐々木健介夫妻のゲスト出演で、テレビ局の取材も増えたが、取り上げ方が、ゲスト中心となって緑化キャンペーンの趣旨の報道が少なかったのが反省材料だった。コマーシャルではないので、どう取り上げるかは、マスコミ次第。いかに効果的に広報したい部分を取り上げてもらうかは、今後も検討していく必要がある。
また、最近では「キャッチボールのできる公園」に関する広報が上手くいっていた事例だと思う。一般市民の方の関心も高く、野球関連団体の協力も、プロ野球関係者のイベント参加だけでなく、事業の推進費用も含めた協力であり、全体として効果的な広報が行えたと思っている。
都市公園は、使ってもらう施設であり、こうしたユーザーからの提案による公園利用のアピール、広報は今後、もっと盛んになっていいと思う。似たような形で、ドッグウォークキャンペーンをNPOと一緒にやっているが、ペットのフンなど、飼い主のマナーが指摘される中で、よりよいマナーの啓発等を公園で行うイベントは、社会のニーズを得たものといえるだろう。
参画型社会における政策関係の広報は、行政関係者向けだけでなく、広く国民に向けて広報することが重要である。特に、公園緑地行政は、国民に最も身近な行政のひとつであり、多様な主体の参加協力によって成立つ分野でもあり、これらの活動を支援応援するように広報を展開することが益々重要になってくると思っている。例えば、今年度から7都市緑化基金が第三者機関として自社敷地の緑化や緑化活動に熱心な企業等を格付けする社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)をスタートさせたが、この制度を広く知っていただくために国交省としても様々な機会を活用して広報を行うなど全面的にバックアップしている。
なお、2006年は、都市公園法制定50周年、古都保存法制定40周年、さらに国営公園制度発足から30周年の記念すべき年であり、この機会を活用して、都市の緑の大切さや公園緑地行政推進の必要性を訴えるため、国・地方公共団体や緑の関係団体は、互いに連携を図り、知恵を出し合って積極的な広報活動を進めていければと思っている。
|