INDEX 広報 日造協 2006年1月1日 第382号
1面

年頭にあたって    (社)日本造園建設業協会  会長 成家 次男

醍醐桜

2面

【新春特集】
 日造協の広報を再考する
 協会の広報活動とは?広報は必要なのか?

 はじめに 広報再考の背景と目的

 1 これまでの広報を振り返る ― 実績と効果・反省

3面

 2 都市公園行政と広報 ― 根拠明示し、より市民向けに

4面

 3 これからの広報を考える広報フル活用の時代に

 みどり豊かな生活環境の創造をめざし

 

1面

年頭にあたって
(社)日本造園建設業協会
           会長 成家 次男

 

 戌年の狗は忠実・信義の象徴として家族の一員のようにして飼われてきましたが、広い地域にわたって、悪霊を追い払うとされ、また米や黍は昔、狗によってもたらされたという言い伝えが残っており、人々にとって大切な働き手でもありました。少子高齢化が一層進んだ今日においては、狗は働き手というよりは、飼い主に忠誠を約束し、癒しのペットとして人間になついていると言えます。 昨年は愛知万博、福岡都市緑化フェアがいずれも大きな成功を収め、造園建設業界としても少なからず社会に貢献できましたことは大変喜ばしい限りであります。関係者の皆様のご努力に心より敬意を表する次第です。
 今年は、大阪城公園で第23回全国都市緑化おおさかフェア「花・彩・祭 おおさか2006」が3月25日(土)から5月28日(日)の65日間開催されます。開催テーマは、″ひとが動く、まちがかわる 〜 花と緑の晴れ舞台、大阪城を起点として 〜″であります。
 花・彩・祭のおおさかフェアでは、大阪に住む人だけでなく大阪に関わるすべての人びと、すなわち大阪人が主役になって、まちを舞台に多彩な緑化活動を繰り広げ、花と緑・光と水の美しい大阪をつくりだします。そして、大阪城公園が持つ、都心の貴重な緑の資産と歴史や文化が現代的な形で融合した観光都市にふさわしい魅力により、多くの人が集い、賑わう祭典となることをめざしています。目標入場者数は150万人です。ご成功を心より祈念申し上げます。
 さて、今年の協会活動は、第一に協会財政の建て直しであります。昨年より、財政運営特別委員会の専門部会を18回、作業部会を10回開催し、造園建設事業の回復と発展、会費の安定的確保、協会組織のあり方、人材の確保と技術の向上、新規事業領域の拡大、社会的貢献など広範な分野に亘って検討を重ね、この3月末には最終の結果を得られるように作業中であります。
 また、同時に新しい日造協のビジョン策定についても作業中であり、21世紀の造園建設の方向性を明確に打ち出すこととしています。造園建設が国民の間で広く親しまれ、国民生活に密着した産業に成長し、会員各位がお互いに協力し合い国民の期待に応えられるようにたゆまない努力を傾注していかなければならないと思います。努力の後に成功ありと深く信じてこの一年を実りある良い年となることを祈念申し上げます。

醍 醐 桜(だいござくら) 

 

 岡山県真庭市、旧落合町西北の吉念寺(きちねんじ)集落のはずれ、見晴らしのよい高台に「醍醐桜」と呼ばれる桜の巨木が1本そびえています。
 この醍醐桜は県下一の巨木といわれ、新日本名木百選にも選ばれた見事な桜で、目通り 7.1m、根元周囲 9.2m、枝張りは東西南北に 20m、樹高 18m、推定樹齢 1000年以上といわれています。(昭和47年12月岡山県の天然記念物に指定) 桜の種類は、ヒガンザクラの一種アズマヒガン(エドヒガンという人もいる)で、かわいらしい微紅色の花を毎年4月10日前後に木いっぱいに咲かせます。
 後醍醐天皇がこの地に立寄られた時、“見事な桜じゃ”と賞賛したと伝えられ、また、地元の人が総出で見送ったという「大勢坂(おおぜいざか)」の地名も残り、近年、テレビ局や雑誌で取り上げられて有名になり、年間を通じ全国から多くの方が訪れ、四季折々に織りなす自然の美しさを楽しんでいただいています。
                                   (写真提供:真庭市)

2面

【新春特集】
日造協の広報を再考する
協会の広報活動とは?
広報は必要なのか?

はじめに
広報再考の背景と目的



 日造協は、その前身「日本造園緑地組合連合会」時代を含めると、昨年がちょうど40周年、1971年に現在の名称と社団法人の認可団体となり、今年は35年目を迎える。
 広報活動としては、1974年に機関紙を創刊。現在まで、この『広報日造協』をはじめ、各種出版物、パンフレットなどの紙媒体やビデオ、CD―ROMの配布、頒布によるPR活動、会員向けの速報としては、FAXやEメール、ホームページでは広く一般へのPRも意識しながら、会員に限ったページも設定し、『広報日造協』のバックナンバーや書籍の販売も行えるようなっている。
 これらの紙やインターネットなどの通信による広報活動以外では、全国都市緑化フェアや緑化キャンペーンへの協力をはじめ、エコ・グリーンテックなど、来場者を実際に迎えてのイベントでのPRも実施しており、日造協主催や日造協が参加する造園産業振興会によるシンポジウムなどでも、公園・緑地の効用などのアピールをはじめ、業界、協会の取り組みなどを紹介している。
 さらに、近年は「街路樹剪定士」(登録4897872号)や「植栽基盤診断士」(登録4897873号)などの日造協が主催する資格制度も充実してきており、こうした資格制度についても、外部に広く門戸を開くことによって、造園技術の適切な普及に広がり、協会の社会的認知にもつながっていくと考えている。
 しかしながら、「広報」といっても、さまざまな取り組みが考えられ、広報について改めて考えてみる必要があるとの考えから、今回の意見交換会を企画した。 
 また、日本の緑の推進を担うお立場から、広く公園緑地行政における広報なども考えられている国土交通省緑地環境推進室の西川嘉輝室長をお迎えして、どのような取り組みが行われているかをはじめ、今後の目指している方向などについてお話をお伺いし、日造協の広報活動の参考にさせていただくとともに、今後日造協が取り組む広報活動について、助言を頂ければと思っている。

1 これまでの広報を振り返る 
 ― 実績と効果・反省

 

「広報日造協」は会員向けベースは「ホームページ」
 機関紙として、日造協の広報活動の中心ともなっている『広報日造協』は、『月刊日造協』として、毎月の発行を行ってきたが、インターネットの普及と広報経費の縮減のため、一時期必要に応じての不定期発刊とした際に『広報日造協』と名称を変更したものの会員をはじめとする読者の要望から、昨年度から毎月の発行に戻している。
 このことから当協会にとっても″広報″は、欠かせない活動といえる。しかし、厳しい財政上、より効果的な取り組みが求められ、合わせて環境や景観への広がりをはじめ、防災、生物の多様性、地球温暖化の防止など、大量の情報からの取捨選択と、より複雑化した情報の整理を迅速かつ正確に広報していくことが求められている。 また、単に情報を伝えることの以前に、何のために、誰に、どんな方法で、どのように広報するかを改めて考える必要がある。
 ■現在の『広報日造協』は、会員プラスアルファで、会員を中心としながらも、外部にも発送しており、協会員にとっては、もっと細かな協会情報が知りたいと思うこともあるであろうし、外部への広報としては、地味なものになっているのではないか。会員と外部、さらには一般市民を考えた場合、ひとつの媒体で両方を満たすのは難しい。
 『広報日造協』は、協会員に向けたものとして、会員に役立つ内容を掲載するよう努め、一般市民、外部向けには、ホームページを改善して、もっとアクセスしやすい内容、アクセスして役立つ情報を盛り込む必要があるのではないか。
 現在のホームページに限っていえば、日造協の紹介という感じだが、日造協そのものに興味を持つ人は少ないはずだ。調べものがあって、検索してみたら、日造協という団体が、頼りになりそうだ、と思われる…例えば、ビオトープ、屋上緑化に取り組みたいという人が、いろいろ見たところ、日造協に聞くのが良さそうだと思ってもらえるそういうものが必要だと思う。 
■ホームページはまだ利用していない人もおり、紙媒体の広報は必要だ。
 一般市民への広報については、日造協というよりも、業界全体で取り組んだ方がいいと思う。『広報日造協』は、まだ一般の方が読んでも内容を理解できるが、業界団体の協会報には、会員向けのものもあり、協会員にしか理解できない内容もある。広く一般に発信していくことは大事だが、こうした協会員を対象にしたものとは区別する必要がある。将来的にはインターネットに集約されていくのかもしれないが、現在は使い分けを考えた方が良い。
 ■百年を超える歴史と4百社近い会員を抱える地元建設団体でのアンケート結果では、ホームページのメリットをあまり感じないという結果が出た。建設業者が単に情報を出しても、多くの人はあまり関心がないことの現われといえる。
 また、会員としては会費を払っており、有料である自分たちに有用な情報を広報すべきという意識も大きいといえる。協会における広報を考える場合、こうした協会員の存在を忘れてはならない。
 一方で、一般市民をはじめ、外部への広報は、広く社会に認知してもらうことによって、回りまわって会員の業務への理解、会員企業への理解につながっていくものだが、理論的にそうであっても、先のアンケートの通り、実感を伴わないことが多いであろうし、直接のメリットといえる仕事に結びつかないことがほとんどといえる。 しかし、直接仕事に結びつけるのは各企業の努力であり、協会、特に公益法人として、社会に役立つ情報を提供して行くのがその使命でもある。緑の必要性をはじめ、緑をつくり、育むことの必要性を訴え続けることで、行政や市民も緑の必要性を理解してくれるであろうし、そのためには専門的な知識や技術が欠かせないということへの理解も少しずつであっても広がっていくはずだ。そういう協会の広報のあり方については、逆に協会員の皆さんの理解を得る必要があると思う。
 ■『広報日造協』による広報や都市公園をはじめ、労働安全など、会員への周知を求める国の通達などのFAX速報や公共空間に花が取り入れられるようになったときには、『広報日造協』で連載し、これを出版社から『花の造園』として発刊。そのほか、伝統技術や建設業の経営、さらに都道府県支部のリレー連載コーナー『ふるさとの県木県花』もカラー版で発刊するなど、『広報日造協』を中心に、さまざまな広報活動を行ってきた。中には、その位置づけが難しく、メーリングリストによる定期的なメールニュースも試行したが、日々様々なメールが配信される中、紛れてしまいやすく、メールアドレスの変更が多いなど、なかなか広報の有用なツールとして活用し切れなかった場合もある。
 『広報日造協』は、限られた紙面と印刷、発送作業など、手間も掛かるが″送り届ける″ことができ、受け取ったり、読むための機器も不要で、受け取り手には簡便というメリットがある。こちらに関心を持たない人で、こちらが読んでもらいたい対象には非常に有効な広報手段といえる。
 FAXも読み取る機器は必要だが、受け取った後は、簡便に扱え、すぐに送信できるメリットがある。ただ、細かな文字には耐えられず、情報量にも限りがある。 一方で、情報量は無限に近く、いろいろな見せ方ができ、そのコストも紙媒体に比べると大幅なコストダウンが可能なのが、インターネットを使った広報だ。 メールマガジンは、″送り届ける″という性質も持っており、登録さえされていれば、FAX同様にすぐに送ることができる。ただし、あまり多くの情報だと読みづらく、機器が必要なので、簡便とは言えない。ホームページと同様、現在のところ、意識のある人が読むレベルといえる。
 ホームページは、″送り届ける″ことは、できず、アクセスしてもらう必要があるが、それさえクリアすれば、カラーの画像だけでなく、リアルタイムの音声付動画も、膨大な資料も見ることができる。新しいものや古いもの、テーマごとなどの整理もできるので、広報のバックボーンとして、すべてが集まっているという状態にしておくことも可能であり、そういった状態を保つことも今後大切だと思う。
 また、展示会や各種イベントへの出展は、協会の存在をアピールするとともに、人々の生の声を聞くことができる数少ないチャンスであり、こうした機会には、広報とともに情報の収集もできる。
 さらに、各種要望活動、提案も広報活動のひとつで、これからはこれにプレスリリースのような記者発表も恒常的な広報活動の一つに加えた方がいい。なかなか全体を把握するのは難しく、個別の活動にとどまりがちだが、それぞれの特徴を生かし、これらを上手く連携させて、効果的な広報を考えていく必要があると思う。
 広報にはいろいろな意味があると思うが、まず、何を知ってもらいたいかであり、それをどう伝えるかということだと思う。

3面

 

2 都市公園行政と広報
― 根拠明示し、より市民向けに

 

国土交通省 都市・地域整備局 公園緑地課 緑地環境推進室 西川嘉輝室長に話を伺った             

マスコミへの情報発信等関心呼ぶテクニックも必要
 
都市公園行政の場合、簡単に言うと、財政が厳しい中で、いかに公園緑地の整備を進めていくかという課題があり、そのため、公園緑地の必要性や効果を知ってもらい、予算確保に当たるという使命がある。
 具体的には、国土交通省が頑張っている取り組みを紹介し、国民から賛同を得て、この結果が、予算や施策に反映されることになる。
都市公園行政は、市民に身近なこともあり、4月と10月の春秋の緑化キャンペーンをはじめ、国の中でも早くから、市民を意識してきたが、それでも以前はどちらかというと、施策への理解や利用など、都道府県向けの広報であったといえるかもしれない。 しかし近年、公園緑地の整備推進や施策に理解を頂くためには、もっと深く国民の皆様に知ってもらうことが必要であることから、より話題性のあるテーマとして、新潟県中越地震や屋上緑化などを例にあげ、さらに、単に「緑は必要です」「緑はいいですね」ではなく、広報においてもデータを示しながら、緑が必要な理由をきちんと説明することを心がけるようにしている。
 例えば、平成17年2月に発効した京都議定書では、日本は1990年の時点からマイナス6%を削減する必要があり、その推進計画が閣議決定されている。
 計画では、都市緑地への期待は大きく、これには3つの根拠があり、@直接CO2を吸収する A身近な存在であることから国民一人一人の意識の啓発につながるB都市部のヒートアイランド現象に効果がある――からだ。
 都市緑地が直接CO2を吸収する割合は、国土レベルの森林からすると量的には小さく、都市部の地価や苗木ではなく高木を植栽する場合が多いことなどから、それだけを見れば費用対効果はあまり高くないといえる。しかし、ヒートアイランド現象は、都市型洪水などにも関係し、さらなるエネルギー使用などにもつながり、その緩和効果のメリットは大きい。
 また、啓発面での期待も大きい。日本は省エネ機器の普及が進んでいるので、ちょっとのことでは、大幅な削減にはつながらず、逆に我々の生活は、さらに多くのものが機械化、電化され、エネルギーの消費は拡大傾向にある。こうした中で、大幅な削減をするためには、ライフスタイルが変わるくらいまでもっていかないとならないが、都市の緑はその機会を作る可能性を持っている。国民に最も身近な吸収源対策である都市の緑化活動へ参加することで、地球温暖化問題を身近な問題として捉え、自分自身の生活改善へつなげていく。そのような役割も都市緑化に期待されている――という視点をしっかり持って広報を行うことが重要と考えている。 また、データに基づいて、明確に情報を提供するだけではなく、やはり関心を引くように、使ってもらえるようにするテクニック、見せ方も必要だ。
 ホームページに載せておくだけでは、例え有用な情報であっても効果的とは言えない。活用されてこそ、広報の意味がある。そこでもっと検索しやすく利用しやすいように構成を見直し、データの更新も速やかにするように今年7月頃に国土交通省のホームページ内の「公園とみどり」を改善している。なお、これらの改善効果を把握するため公園だけのアクセス数のカウントが出来ないか検討しているところである。
 また、記者発表も広報手段としては極めて重要だ。従来から春秋のキャンペーンやみどりの愛護の集いなど、各種催事や通達などは、直接関係者に広報するだけでなく、記者発表を通じた広報を行ってきた。
 しかし、より積極的な広報を行うために、今年は6月に壁面緑化の効果、8月にバイオラングの効果速報など、調査結果などのデータについても記者発表を行った。 2つのデータの記者発表は、暑い時期の方がタイムリーで、取り上げてくれる可能性、大きく扱ってくれる可能性が高いと考えたからで、こうした記者の方々、読者の方が関心を持つ内容、時期を考えることも大切。新聞や情報誌などに取り上げてもらうために、プレスリリースの工夫をあれこれと考え、記者の方が使いやすいようにする工夫、リリースする時期なども、記者の方が休み前に、記事を溜め込んでおきたい時期を狙ったりすると効果的だ。こうした工夫も広報を効果的に行うための大切なポイントといえる。
 伝えたいという想いがあれば、いかにして伝えるかを考えるはずで、その想いの強さ、大きさが広報にも反映されてくるのではないか。
 一方で、早くから取り組んできた春秋のフェアなどは、マンネリもあってかなかなかマスコミが取り上げてくれなくなってきてしまっているので、何らかの対策が必要になってきている。
 平成17年度秋の緑化キャンペーン中央行事として、銀座・数寄屋橋で行ったイベントには、プロレスラーの佐々木健介夫妻のゲスト出演で、テレビ局の取材も増えたが、取り上げ方が、ゲスト中心となって緑化キャンペーンの趣旨の報道が少なかったのが反省材料だった。コマーシャルではないので、どう取り上げるかは、マスコミ次第。いかに効果的に広報したい部分を取り上げてもらうかは、今後も検討していく必要がある。
 また、最近では「キャッチボールのできる公園」に関する広報が上手くいっていた事例だと思う。一般市民の方の関心も高く、野球関連団体の協力も、プロ野球関係者のイベント参加だけでなく、事業の推進費用も含めた協力であり、全体として効果的な広報が行えたと思っている。
 都市公園は、使ってもらう施設であり、こうしたユーザーからの提案による公園利用のアピール、広報は今後、もっと盛んになっていいと思う。似たような形で、ドッグウォークキャンペーンをNPOと一緒にやっているが、ペットのフンなど、飼い主のマナーが指摘される中で、よりよいマナーの啓発等を公園で行うイベントは、社会のニーズを得たものといえるだろう。
 参画型社会における政策関係の広報は、行政関係者向けだけでなく、広く国民に向けて広報することが重要である。特に、公園緑地行政は、国民に最も身近な行政のひとつであり、多様な主体の参加協力によって成立つ分野でもあり、これらの活動を支援応援するように広報を展開することが益々重要になってくると思っている。例えば、今年度から7都市緑化基金が第三者機関として自社敷地の緑化や緑化活動に熱心な企業等を格付けする社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)をスタートさせたが、この制度を広く知っていただくために国交省としても様々な機会を活用して広報を行うなど全面的にバックアップしている。
 なお、2006年は、都市公園法制定50周年、古都保存法制定40周年、さらに国営公園制度発足から30周年の記念すべき年であり、この機会を活用して、都市の緑の大切さや公園緑地行政推進の必要性を訴えるため、国・地方公共団体や緑の関係団体は、互いに連携を図り、知恵を出し合って積極的な広報活動を進めていければと思っている。

4面 3 これからの広報を考える
広報フル活用の時代に


情報の積極的発信が
さらなる情報集積・PRに

 

座談会出席者…山田副会長、小林常務、安藤総務部長、横川参与(『広報 日造協』担当)、広報部会=有賀、伊藤、鈴木、武内、比留間、横山の各委員

 

 

広報は指定管理者も必須
市民との連携ツールに!


これからの広報を考える 広報フル活用の時代に
■造園建設業全般が公共事業を主体にしていたこともあり、さらに施工業界にあっては、なかなかプロモーションというのをあまりしてこなかったし、得意ではないといえるかもしれない。しかし、これからは積極的な取り組みが必要で、協会員をはじめ、広く国民を対象と考えた広報と、特に業界外については、どのように関係団体が協力して広報していくかを検討することも早急に考えなくてはならないと思う。業界外の人にしてみれば設計も施工も同じ、あるいは造園の区別もなく、建設業、庭師、植木屋も皆同じかもしれない。
 ■日造協は他と比べても会員数の多さ、土木、植木生産、種苗といった事業品目の多様さ、そして地域性もいろいろで、会員向けに情報の最大公約数を見出すのも大変だったりすると思う。どの会員にも役立つ広報と会員以外向けの広報の両立は難しく、一般向けも会員全てにあてはまるものだけをPRするのは不可能であり、その整理に終始するよりは、自然環境創造・保全、屋上緑化、校庭の芝生化など、一般的になっていることを全面に出して、これを日造協の会員、造園建設業が担っているという出し方の方がいいと思う。
 ■NHKの朝の連続テレビ小説「わかば」効果で造園のPRにもなったが、期待の大きかった分だけ、もう少し将来の造園の職域の魅力を強く出して欲しかったと振り返って思う。しかし、主人公が造園を志すという滅多にない機会であったことは事実であり、その機会をもっと有効に使えたのではないか。そういうタイミングを逃さず活用していくことも今後、取り組んでいかなければならない課題だ
 ■都立園芸高校の卒業生が主体となり、植林ボランティアを派遣するNPOを発足させ、同校と三宅高校などの生徒たちが行う三宅島の緑を復元する植林活動を支援しているが、この活動が全国紙2紙に取り上げられた。写真入りの大きな記事で、思いがけないことだった。7日本さくらの会からもサクラの苗木3百本が提供されるなど、活動は広がりを見せるが、こうした紙面にも″造園″の文字はない。広報の取り組みとして、こうしたNPOを含めた活動への協力など、市民が求めているニーズに応えていくこともひとつの方法だと思う。
 ■全国、あるいは各都道府県の造園関連協会ではそれぞれ会報などを作っているようだが、なかなか目にする機会はなく、あってもそれらを読みこなす時間もないが、業界でどのようなことが起きているのかを知りたい気持ちは強い。
 ある業界紙では″今月の指定管理者″というコーナーを設け、どんなところがと、つい見てしまうが、『広報日造協』に″今月の新公園″コーナーみたいなものがあってもいいと思う。簡単な公園の紹介であっても、規模、傾向を知ることができるし、動きがあって面白いのではないか。
 都の協会では毎年『緑化白書』を発行しているが、30周年ということで、これまでの整備費、維持費といった予算や公園面積などを都や区市町ごとに整理し直して編集した。社会の動きと連動していたり、都やそれぞれの行政の施策と連動していることが見受けられ、有効なデータとなった。緑の重要性や景気などについて、感覚で語られることが多いが、データでの裏づけはこれから欠かせないものになってくると思う。
 予算も前年比が示されるが、毎年の微減は最盛期からすると激減であることもある。公園面積は増えているのに、維持費は減り続けるという奇妙な現象にもなっている。日造協には多くのデータが集まっていると思うが、データ収集と整理も広報の役割だと思う。
 ■日造協には「街路樹剪定士」「植栽基盤診断士」など、社会に役立つ技術者の認定を行っているが、こうしたものをもっと広報と連携させて、社会にアピールするのも有効だと思う。
 10月4日が「景観の日」となったが、日比谷公会堂で行われるイベントに合わせて、日比谷公園で″美しい景観をつくるための樹木剪定″をやってみたら、マスコミの関心を引くかもしれないし、むしろ集まった人に、きちんとした技術者による剪定がどういうものなのかをわかってもらうまたとない機会になると思う。そういう努力の積み重ねが造園に対する確かな理解につながるのではないか。 街路樹については、いろいろな人が厳しい意見を述べているが、これに対して専門家としての意見もそれこそ広報していかないと、逆に悪い部分だけが広報されてしまうことにもなりかねない。苦情に対する行政の方々の対応はとてもデリケートな問題だが、それは地域全体のものなのかどうか、樹木の果たす役割を理解した上でのものかどうかはとても大事なことだ。たった一人の方の苦情でばっさりと樹冠を切られた樹木は2度と元には戻らず、美しい樹形、大切な景観を台無しにしてしまうこともある。そのためにも正しい情報を伝え、同時に地域の総意を汲み取る仕組みとしての機能も地域の広報に求められる機能の1つだと思う。
 これらは造園全体のことだが、日造協としてできることにまず取り組まなければならない。それは、業界のためにもなるし、もちろん社会のためになる。
 ■毎年、千葉の市原でやっている街路樹剪定の講習会がローカル紙に取り上げられているし、つくばエクスプレスの開通に伴って行った造園の街づくりイベントもいいタイミングだったのでテレビに取り上げられた。なかなかマスコミの方からアプローチしてきてくれることは少ないので、こちらから発信していく必要がある。広報媒体の周知効果は、TV関係が大きく、30%から40%、新聞は15%から20%くらい。ミニコミ誌や雑誌なども、発行のタイミングさえ逃さなければ、割と取り上げてくれやすい。 また、新聞も支局の人との交流会など、ネットワークがあれば、いいタイミングでいい情報を出せる場合もある。記者の人もいい仕事になり、私たちもいい広報になり、読者・市民もためになる、そういう広報を目指したい。
 ■市民に理解を得たり、マスコミに取り上げてもらうためには、前述のデータの裏づけや科学的根拠など、根拠の明示は欠かせない。業界からの発言は手前味噌といわれることを危惧する人も多いようだが、大義名分があるのだから、どんどん広報すべきだ。環境、景観といった先ほど出てきたキーワードをはじめ、防災対策など、関心を引く造園のキーワードはいくつもあるはずだ。
 宮城県沖地震で、ブロック塀から生垣への作り直しが進められたが、その後はあまり聞かない。生垣は、地震はもとより、火災の延焼防止にも役立ち、さらに景観づくりにも大きな効果がある。こうした機能面、効果に加え、行政の生垣助成などの情報を加えれば、みんなに役立つ広報になるのではないか。
 ■日造協の広報活動は、どういう位置づけか、主なものを見てみると、総務委員会の H普及啓発及び広報活動に関する事項 I機関紙の編集・発行に関する事項 J造園業に関する情報、資料の収集に関する事項 K業界の地位向上のための折衝に関する事項、技術委員会の各種研究に関する事項、事業委員会の A公益活動の戦略・企画立案 D表彰・顕彰に関する事項 F造園緑化事業の拡大推進のための要望等に関する事項――などがあり、広報にかかわる担当が複数に分けられていることがわかる。実務の推進に当たっては、分担が必要になるであろうが、広報全体を考えた場合には、1つの構想を描いて、それを進めていくための体制や申し合わせが必要だ。
 枝葉のところだけではなく、根本から考えなくてはならない問題でもある。
 また、日造協の学識理事から協会の方針や業務運営について、以前いただいたご意見には、市民による植栽やガーデニング教室、街頭での植栽パフォーマンスなど、積極的ボランティア活動の必要性、市民対象の資格制度など市民各層に遡及する協会活動のメニューの検討と、その実行や造園建設業の特徴を生かした中央・地方にわたる防災ネットワークの構築など、行政・市民に造園建設業の効用を実感させる活動の強化、港湾関係など公園以外の部局への働きかけや、市民、企業等とのパートナーシップによる花と緑の街づくりへの参画など、造園専門業としての社会貢献をアピールすることも重要――などがみられる。広報そのもののあり方とともに、具体化するための体制づくりも同時に議論する必要がある。
 ■今後、指定管理者制度が本格化するに連れて、管理者は利用促進のためのPRが大きな業務のひとつになる。利活用を促す取り組みや事故などが起きないよう安全への周知など、広報は事業の柱の1つになってくると思う。
 ■国道の管理で感心したことがある。トチの実は固いので、結構な高さから落ちてくると車を凹ますこともある。そのため、トチの実落としのイベントを毎年開催している。市民の参加も多く、道路利用者の安全確保にもなり、管理費も軽減でき、参加者も楽しく行っている良くできたシステムで、マスコミも風物詩として取材に来ている。参加者を募集するための広報が必要だが、マスコミの相乗効果で街路樹の存在、さらには来年の参加者募集につながるPRにもなる。
 同じように八王子のギンナン拾いも風物詩になっているが、秋の味覚を求める人と、まとめて落とすことで特有な匂いが嫌いな人たちへの配慮にもつながり、人と自然、いろいろな考え方の協調を図った好例といえる。
 落ち葉が公害ではなく、風物詩として捉えられるように広報していくこと、またそうしたソフトの開発が指定管理者の実施とともに増えてくるのではないだろうか。そうした情報を広報していくことで、さらに情報が集まってくる。これまで情報は大切にしまっておくことが大事だと思われてきたがそうではない。積極的に発信することで、さらに情報が集まってくることも多い。

みどり豊かな生活環境の
創造をめざして

 ■広報の話題は、さまざまな面から、いろいろな切り口で、取り上げることができる。プロフェッショナルが少なくなったとか、企業倫理が問われており、こうしたことについて、自分たちの考えを広報を通じて明示することも大切な意思表示である。
 さらに、公園での事故、事件が発生すると、公園は危険な存在として意識され、公園離れが進み、賑わいをなくした公園はさらに近寄りがたい存在になってしまったりもする。
 公園の防災対策は進んできたといえるが、見通しの確保をはじめ、公園を安全に管理していく、公園の防犯対策はこれからの課題だ。広報を通じた地域住民との連携など、公園管理のノウハウの開発は、指定管理者として、造園企業の活躍の鍵にもなる。
 以前神戸での少年事件がきっかけで、マスコミがいっせいに「見通しを良くしよう」と記事を打ち、いっせいに樹木が刈り込まれ、夏になって「日陰がなくて困った」との記事が載った。
 これからの広報については、プレスリリースの活用など、マスコミの力を借りることも大いに検討し、協会員といった内部情報の広報、広く開けた市民への広報と多様な対象にさまざまな内容の情報を提供、広報していくことになる。
 その際に、もっとも欠くことのできないポイントは、日造協としての一貫した姿勢といえる。 日造協の広報のひとつ協会案内となるパンフレットには「みどりゆたかな生活環境の創造をめざして」みどりの重要性を広く普及・啓発することや、技術向上と発展を図ることで、美しい日本の国づくりのために、さまざまな活動を展開しています――と、その表紙に目的が示されている。
 今回の意見交換会で、広報のあり方を再考し、広報の必要性とその可能性が再認識された。今後『広報日造協』をはじめ、日造協の目的を果たすため、これまで以上に積極的な取り組みを進めていく。
 新春にあたり、読者各位のさらなるご協力、ご支援をお願い申し上げます。