広報 日造協 2003年9月10日 第354号

■1面

平成16年度 都市公園・緑地保全等事業予算概算要求 
事業費10 %増 3,259 億円  「緑の回廊構想」など推進へ

平成16年度 自然公園等事業関係予算概算要求 161 億円 
国費12.8 %  自然と共生する社会を

国土交通大臣表彰 建設事業関係功労
当協会から10 氏受彰

【樹林】パートナーシップによる新たな公園運営システム
NPO birth 代表 佐藤留美

1面 2面   3面 4面 見出し


 

●平成16年度 都市公園・緑地保全等事業予算概算要求
  前年度 事業費10%増 3,259億円  「緑の回廊構想」など推進へ

 国土交通省は8月27日、平成16年度都市公園・緑地保全等事業予算概算要求を発表。要求総額は事業費ベースで、前年度比10%増の3259億2000万円で、このうち国費は1593億8000万円で対前年度倍率は1・12倍となった。

 概算要求の基本方針は大きく2つ。

 1. 緑とオープンスペースの総合的・計画的確保

 (1) 美しい景観と豊かな緑を総合的に実現するため、@景観に関する基本法制の整備、A都市緑化・緑地保全に関する法制度の充実、B屋外広告物に関する法制度の充実を図る『景観緑三法』の一体的整備の一環として、都市公園の整備、都市緑化、効率的な都市公園整備と管理のための法制度、緑地の保全を総合的・計画的に推進する施策体系を整備するとともに、民有地における緑地の保全・緑化の推進のための制度を充実する。

 (2) 民有地緑化等に対する支援、立体公園の整備の推進等新たな法制度を活用するための支援措置を充実するとともに、都市公園整備と緑地保全事業の一体的実施、道路・河川等との事業間連携等の取り組みにより、効率的・効果的に緑とオープンスペースの確保を推進する。

 2. 社会資本整備重点計画の実現

 社会資本整備重点計画において定められる重点目標の達成を図るため、別表の事項に重点を置いて、事業を実施することとしている。

 

〈表 平成16年度都市公園・緑地保全等事業予算概算要求額〉

  

▲This Page Top

平成16年度 自然公園等事業関係予算概算要求前年
  国費12.8% 増 161億円  
自然と共生する社会を

 環境省の平成16年度自然公園等事業関係予算概算要求は国費161億円で対前年度は12・8%増となっている。その目的と事業概要は次のとおり。

 1. 目的

 政府の重要課題である「自然と共生する社会」の実現のため、国立公園等において、自然環境の保全や消失・変容した自然生態系の再生を図るとともに、自然との多様なふれあいを求める国民のニーズに対応するため、地球温暖化防止の視点を重視しつつ、自然との豊かなふれあいの場の整備を行う。

 2. 事業の概要

 (1) 自然生態系の保全・再生

 @各省連携、市民参加により、湿原・干潟・藻場・里山等の失われた自然を再生するための整備を推進。(例:釧路湿原自然再生事業)

 A利用集中等による荒廃の防止、荒廃した高山植物群落等の保全・修復のための整備を推進。(例:日本百名山登山歩道整備事業)

 (2) 環境教育・環境学習の場としての利用

 都市と農山漁村の共生と対流を促進するため、各地域の自然環境の特性を活かした環境教育・環境学習を展開する場として必要な拠点施設やフィールドの整備を推進。(例:満越ふれあい自然塾整備事業)

 (3) 地球温暖化防止に資する自然公園整備

 施設周辺地等への緑化、自然エネルギーを利用した整備、木材を極力利用した整備などを積極的に実施。(例:環境共生推進特別整備事業)

 (4) 自然環境の適正な利用の推進

 国立公園の魅力を確立するため、自然環境の持続的、かつ安全で快適な利用がなされるよう、利用拠点や探勝歩道等への整備を実施。(例:洞爺湖地域新活性化事業、北海道自然歩道)

 (5) 快適な利用環境の提供

 自然公園等への来訪者に安全で快適な利用環境を提供するため、各種施設の管理水準の向上を図るとともに、これら施設を含めた園地等の面的な管理を積極的に推進。

〈表 平成16年度自然公園等事業予算概算要求額〉

▲This page Top

 

●2003年国土交通大臣表彰 建設事業関係功労
  当協会から10氏受彰

平成15年の国土交通大臣表彰が発表され、当協会からは10氏が受彰の栄に輝いた。
▼佐孝茂男(63)グリーンシェルター社長、福井県建設業連合会理事。福井県
▼笹本知(57)北海道造園コンサルタント社長、北海道造園建設業協会副会長。北海道
▼齋藤悦郎(59)アサヒグリーン工業代表取締役、日本造園組合連合会常務理事。宮城県
▼君島克彦(64)清水造園会長、元栃木県造園建設業協会会長。栃木県
▼横山宜宏(66)横山園芸社長、埼玉県造園業協会理事。埼玉県
▼間忠明(60)長生園社長、元日本造園建設業協会新潟県支部支部長。新潟県
▼小栗勝郎(64)岐阜造園代表取締役、岐阜県造園緑化協会理事長。岐阜県
▼高村芳樹(56)高村造園土木代表取締役、日本造園建設業協会理事。愛知県
▼奥田武久(64)中央樹景代表取締役、滋賀県造園協会会長。滋賀県
▼井手清一(63)ロードグリーンズ社長、全国道路標識・標示業協会四国支部副支部長。高知県

 

▲This page Top

 

●【樹林】パートナーシップによる新たな公園運営システム

  NPO birth(バース)事務局長 佐藤 留美

 私は2年前に、ニューヨーク市で行われた国際緑地会議「グレートパーク・グレートシティ」に出席した。テーマは「パートナーシップ」である。公園緑地の運営に携わる行政、NPO、設計者、建築家等が全米はもとより、世界各国より一堂に会し、白熱した議論が展開された。参加者の目的はひとつである。「よりよい地域づくりに資する公園運営はいかにあるべきか。パートナーシップをどのように作っていくべきなのか。」。

■パートナーシップの利点

 わが国でも、これからの公園運営には、「パートナーシップ」が必要だと言われている。「パートナーシップ」は、「一人ではなし得ないことを、複数の人々が協力・提携しやり遂げること」である。たとえば、公園緑地の運営は、いままでは行政等の管理者がほとんどの責任を担ってきた。ここに、利用者である市民やNPO、研究者、設計・施行を行う事業者など、さまざまな主体が関わることによって、公園緑地の持つ多面的な潜在力を引き出せる可能性が生まれる。同時に、年々減少する予算への対応策となる期待も持たれているのだ。

■パートナーシップの要

 しかし、バランスのとれた「パートナーシップ」を形づくることは、なかなかたいへんだ。私も、各地で公園運営に関する市民・行政等の話合いの状況を見るにつけ、多様な関係者の間に立ち、調整・仲介をする第3者が必要だという思いが、年々強まっていた。そのようなとき、パートナーシップによる公園運営の先進地である米国サンフランシスコ市を訪れる機会があった。そこで出会った公園緑地に携わるNPOは、まさに調整・仲介の役割を果たし、効果的・効率的な公園緑地の運営に大きく寄与していたのである。

■NPOの役割

 サンフランシスコ市内には大小230の公園緑地があり、さまざまなNPOが活動している。その中で、特に調整・仲介の役割を果たしているのが、San Francisco Neighborhood Parks Council(NPC:サンフランシスコ市民のための公園協議会)である。NPCは、市民・行政・事業者が同じテーブルについて話合う「場」を設定し、住民が近所の公園について主体的に関わるきっかけづくりを行っている。そして、公園で活動する市民グループへの支援やキャンペーンを通して、一般市民や政治家の公園緑地に対する興味関心を引き出している。これが結果として、公園予算の獲得につながっている。さらに、利用者側からのニーズが、新たな設備投資などのビジネスを生み出す機会ともなっている。公園緑地に対する資源を集める中核として、NPOが存在しているのである。

 米国では30年ほど前に、公園予算が激減し、それをきっかけとして、「パートナーシップ」による公園運営手法が育まれてきた。いままさに、日本も同様の状況下にある。私たちがパートナーシップを土台とした新たな公園運営システムを考えるとき、調整・仲介の役割を果たすNPOの確立が早急に必要なのではないだろうか。

▲This page Top