広報 日造協 2003年9月10日 第354号

■3面

【ふるさと自慢】 第36 回  長崎雲仙地域
「緑のダイヤ計画」  重要施設まもなく完成

【造園事例技術紹介】 −No.2 − 水辺の緑化
平成16 年度 予算・政策への要望活動スタート
【緑滴】E X P O
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【ふるさと自慢】 第36 回  長崎雲仙地域
  「緑のダイヤ計画」  重要施設まもなく完成

  雲仙は、昭和9年3月16日、瀬戸内海や霧島屋久とともにわが国で最初の国立公園に指定された。また、昭和3年3月には、「温泉岳(現在は雲仙岳と書く)」は史蹟名勝天然記念物保存法によって名勝地に指定され、同時に5個所の天然記念物が指定された。その後、昭和27年3月には、文化財保護法によって「特別名勝地」に格上げされ、東の「富士山」と西の「温泉岳」の2つが特別名勝地として誕生した。

 また、「温泉山」は歴史的にも古く701年に名僧行基が創建開基した大乗院満明寺の山号で、当時壱千の僧坊を持ち、比叡山、高野山とともに天下の三名山と称された。

 雲仙天草国立公園の核心をなす雲仙岳は、長崎県の南東部に突出する島原半島の中央部に位置し、普賢岳(標高1359m)を主峰とする十に近い山々からなった集成火山の総称でその規模は、東西10q南西15qにわたっている。

 普賢岳は、平成2年11月、198年ぶりに有史以来3回目の噴火をはじめ平成7年5月火山活動を停止した。

 その後、地元では噴火災害地の自然利用や災害復旧の方策について官民一体となって検討会を開催し普賢岳一帯の自然利用を一日千秋の想いで待ち望んでいた。

 環境省では、国立公園の核心地域である雲仙において、普賢岳の噴火災害で荒廃した国立公園区域一帯の自然環境の修復と、人と自然のふれあいの場づくりを目指して「緑のダイヤモンド計画」を策定し、平成9年度から7ヵ年計画で環境省と長崎県が各々の事業を分担し事業主体となって推進してきた。

 また、本計画は、長崎県島原地域再生行動計画「がまだす計画」の重点プロジェクトにも位置づけられ、長崎県と協調を図り計画的に事業の推進が図られてきた。

 既に完成し供用している自然公園施設は2つで、北雲仙地区の「田代原自然体験フィールド」では、キャンプ場・トレイルセンター・普賢岳周辺の登山道・探勝歩道・自然解説などが完成。南雲仙地区は、国民休暇村として昭和50年にオープン。いつでも、誰でも気軽に利用できるレクリエーション施設として、ビジターセンター・自然游歩道・野鳥観察舎・園地などが完成。東雲仙地区(島原市)は、平成5年6月、北東側の大火砕流の直撃を受けて火山灰などで埋没した垂木台地を含めた一帯を「平成新山(普賢岳の愛称)体験フィールド」として溶岩ドームや火砕流跡地の景観と周辺の自然復元の状態を含めて間近に観察し体験し学習できる施設として、平成新山ネイチャーセンター・県道からの取付道路・自然観察歩道・休憩所・駐車場が完成。雲仙温泉集団施設地区及びその周辺においては、園地広場・休憩所・散策歩道・登山歩道などが完成。現在施工中の施設として、高部湿原で天然記念物「原生沼沼野植物群落」の自然復元・ビジターセンター建設など重要な施設が本年度完成する。

 工事は、県内の造園工事業者・土木・建築業者によって進められ自然公園施設としてほぼ完成し既に供用され自然利用がはじまっている。自然とふれあい自然のしくみを知り自然を愛する心を育み自然と共存できる付き合い方を身につけ子供たちに働きかけていくことは大きな責務ではないだろうか。雲仙は精妙な自然と雄大な展望を持ち、古い歴史を持ち、優れた設備がある街。時代時代にさまざまな様相を見せつつ国際観光地として生き続けることでしょう。

平成新山ネイチャーセンターから雲仙普賢岳溶岩ドームを望む 標高 1,483 m で噴火前より 124 m 高くなった。

 

雲仙天草国立公園「雲仙地獄遊歩道」 路面は温泉による風化を避けるため石張り。
自然植生復元が期待される「原生沼沼野植物群落」 国指定の天然記念物(昭和3年3月指定)

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【造園事例技術紹介】 −No.2 − 水辺の緑化

多自然型川づくりを基本とした河川環境の整備と保全が、国土交通省をはじめ行政の基本的方向となった。こうした中、日造協鹿児島県支部と(社)鹿児島県造園建設業協会では、平成12年度に生物の多様な生息場所の確保と良好な河川景観と水辺空間の形成を目的とした「自然育成小委員会」を設置、護岸工法や植物の耐性など、試験施工を実施。昨年10月にはこれらの成果を『水辺の緑化だより』(A4判、カラー40頁)にまとめた。

 河川の生態系は、水辺の状況、洪水等による流量の変化、土砂の移動など、多岐にわたって影響を受け、このような特殊環境で、安定した植生を確保するには、既存の緑化技術に加え、試験施工、追跡調査の結果に基づく新技術の開発が必要だった。このため、平成12年9月、会員各社の協力で試験施工を実施した。
 試験施工した護岸タイプは@植生ブロック護岸A石積護岸Bフトンカゴ護岸で、7月に計画書を作成、9月に試験施工、10月から、翌々14年9月まで、追跡及び生物調査を実施。その結果を9月、報告書として取りまとめ、さらに10月『水辺の緑化だより』を発刊した。
 試験施工、調査には42社が参加。甲突川・油須川M型淵の水衡部、下谷口川で実施。施工法ごとに、施工地、施工方法、使用植物(水域・水際域、陸域)、結果及び考察(水域、水際域、陸域)を記録した。
 その結果、“川は川がつくる”など、参加者においても河岸植栽に対する人為的植栽への疑問があったが、緑化困難さを痛感する一方で、水域から陸域にいたるエコトーン(堆移帯)の植生の豊富さが水辺の生物の多様性につながることが示されるなど、有効な技術成果が得られた。
試験施工の結果、治水を重視した既存の河川構造物にも造園的手法を加えることで、生物的に多様な河川空間が復元されることが専門家に依頼した生物調査で確認され、条件にあった植栽を行うことで、新たな自然植生護岸の創造も可能になることがわかった。

 今後の河川整備では、緑化が可能で十分な強度、耐侵食性を有する河岸防御工法が望まれている。鹿児島では、協会をはじめ、会員企業が、今回の報告書をフィードバックし、実践を重ね、河川生態系保全技術の高度化を目めざしていく。

1年後の植栽調査でフトンカゴ護岸は緑に覆われていた
フトンカゴにヤシ繊維ロールを追加した護岸 
土のうを入れた石積み護岸 
植栽ブロック

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平成16 年度 予算・政策への要望活動スタート

 当協会では、現在平成16年度の概算要求、政策検討に対応した要望活動を展開している。緑豊かで安心できる街づくりは必須。緑化の必要性や技術者の果たす役割などを適切に示し、理解を得てまいりましょう。

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【緑滴】E X P O

 1970年 国内初の万国博覧会が大阪千里丘陵で開催された。博覧会には、テーマが幅広い「一般博」と一つに絞った「特別博」とがあり、大阪万博は「一般博」であった。まず会場入口では観客を迎える太陽の塔に圧倒された。中に進めば各国が競って先端技術や文化を紹介しており、見るものすべてが当時13歳の少年には驚きの連続であった。その中でも、今ではよく見る「動く歩道」や何時間も並んで見たアポロ12号の「月の石」が印象的であった。この石は大人のこぶし大でごつごつした銀色の石だったと思うが、とても感動した。

 博覧会はその後各地で開催された。特別博としては、1975年に沖縄県の海洋博が、1985年は茨城県で科学博が、1990年には大阪で花博が開催された。私は花博では現場代理人として参加し、あの時大阪万博で感動していた少年が博覧会の仕事に係るとは思いもよらないことだった。当時現場を見ていて感じたことは、観客に感動を与えるには最高の作品を作り上げる技術と職人魂だと思った。そして、この仕事に就いて良かったと思った。

 来年は静岡県で浜名湖花博があり、2年後には、一般博として国内2回目の万博が愛知県で開催され、博覧会少年としてはとても楽しみである。博覧会に行けば必ず感動がありますので足を運んでは如何でしょうか。

((株)石勝エクステリア・横山 容三)

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